膳余磯

膳余磯（かしわで の あれし）について

膳余磯は、日本古代の5世紀前半に活躍した豪族であり、初代若狭国造とされています。彼の姓は「臣」で、天皇に仕える氏族の一員でした。余磯に関する記録は主に『日本書紀』から伝わっており、彼の業績や出来事は後世に強い影響を与えました。

天皇との関係

『日本書紀』の巻第十二には、余磯による特別な出来事が記されています。履中天皇の2年目の冬、磐余池が築造され、その後、天皇が遊宴を催しました。その際、余磯は酒を献じ、その食膳を担当していました。この時、天皇の盃に季節外れの桜の花が混じっていたことが、余磯の名を広めるきっかけとなります。

天皇はこの不思議な桜をどうしても調べたくなり、物部長真胆に調査を命じました。見事に桜の木を見つけ出した長真胆の働きによって、天皇はその木を献上されます。この桜の木の伝説は「磐余稚桜宮」という宮の名の由来となり、余磯と長真胆の二人はそれぞれ稚桜部臣・稚桜部造の氏姓を与えられることになりました。

余磯に関する説

余磯が獲得した名誉には幾つかの説がありますが、膳氏は天皇の食膳に奉仕する氏族であるため、この栄誉を得たのだと言われています。ただし、この説話には信憑性が薄いとの指摘もあり、氏族名が「若狭」の国名に由来しているのではないかという説も有力です。これは、御食つ国としての若狭の背景に基づいています。

『旧事本紀』の「国造本紀」の部分には、遠飛鳥朝において膳臣の祖である佐白米命と児荒礪命が国造に任ぜられたという記載があり、これにより初代若狭国造としての余磯の存在が記録されています。また、『書紀』第二十九によると、天武天皇の時代には、若桜部臣一族が朝臣に賜姓されてもいます。

余磯の影響と後の時代

膳余磯の存在は、その後の時代にも影響を及ぼし、特に若狭という地域における政治的および文化的な発展に寄与したと考えられています。彼の事績や伝説は、古代日本の豪族の多様性や、天皇との関係を理解する上で重要な要素となります。余磯の影響は、今日においても若狭の地名や文化に色濃く残っており、彼の物語は日本の古代史の中で特筆すべきものとなっています。

参考文献

• - 『日本書紀』（二）・（五）岩波文庫、1994年、1995年
• - 『日本書紀』全現代語訳(上）・（下）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
• - 『古事記』完訳日本の古典1、小学館、1983年
• - 『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年

関連項目

• - 飛鳥時代以前の人物一覧
• - 磐余
• - 稚桜部五百瀬

もう一度検索