至道無難

至道無難（しどう むなん）

至道無難（1603年 - 1676年）は、江戸時代初期に活躍した臨済宗の僧侶です。本姓を大神氏、俗姓を相川といい、幼名を刑部太郎、通称を治太郎、源右衛門と名乗りました。また、親明という諱や、却外、道時などの号も持っていました。特に、白隠慧鶴の法祖父にあたる人物として知られています。

生涯

生い立ち

慶長8年（1603年）、美濃国不破郡関ヶ原宿（現在の岐阜県関ケ原町）で、本陣を営む相川治郎道祐の長男として誕生しました。関ヶ原は、関ヶ原の戦いの舞台となった場所であり、無難の生誕地には「至道無難禅師生誕地」碑が建立されています。戦後、無難の親族は、戦功による褒賞と世間の非難が交錯する中で、混乱した時代を生きていました。また、親族の女性が藩主に召し出されたものの、藩主の乱行により一家が没落するなど、無難は幼少期から世の無常を感じていたとされています。

在家時代

幼少の頃から書道を嗜み、特に草書を得意とした無難は、「仮名書童子」と呼ばれていました。京都や大坂を訪れる中で仏教に惹かれましたが、家督を継ぐ立場のため出家は叶いませんでした。しかし、八百津村大仙寺の愚堂東寔との出会いをきっかけに、在家のまま仏教の教えを請い、公案を授けられます。その後、愚堂から「劫外」の号を授かり、慶安2年（1649年）には「至道無難」の号を得たとされています。

出家

世の無常への強い思いと出家への願望から、無難は酒に溺れるようになり、ついには家人から疎まれるようになります。そうした状況を知った愚堂は、無難を江戸に連れて行き、正燈庵で出家させました。無難は厳しい修行に耐え、遂には愚堂から国師の附囑を受けますが、これを辞退。その後、麻布桜田町に東北庵を構え、多くの人々の崇敬を集めました。この頃、子供たちに手習いや謡曲を教えていたとも伝えられています。

晩年

寛文7年（1667年）、門弟たちが東北庵を禅河山東北寺へと発展させると、無難は初代住職を辞退し、弟弟子を住職に据え、自身は別院に住みました。晩年には、『即心記』や『自性記』などの著作を著し、禅の教えを広めました。延宝2年（1674年）、小石川戸崎町に庵を構え「至道庵」と名付けましたが、2年後の延宝4年（1676年）に老衰で亡くなりました。遺体は東北寺に埋葬され、塔頭が建てられました。

死後

至道庵は弟子の祥山丹瑞が継ぎましたが、その後、一旦廃滅。大正時代に再興されたものの、東京大空襲で焼失し、再建は叶いませんでした。無難は生前、無位無官を貫きましたが、死後、妙心寺首座の号を贈られています。

思想と影響

至道無難は、その号の由来となった『信心銘』の「至道無難、唯嫌揀択」の句が示すように、自然のままの姿で生きることを重視しました。また、道歌を好んで用いたことからも、教えを広く民衆に伝えようとした姿勢がうかがえます。無難の教えは、高弟の道鏡慧端を通じて白隠慧鶴へと受け継がれ、その後の禅宗に大きな影響を与えました。

弟子

高弟には道鏡慧端がおり、白隠慧鶴を見出したことで知られています。その他、至道庵二世の祥山丹瑞、幻住庵主の光応一外、極楽水庵主の岩融円徹などがいます。また、徳川綱吉の側室である貞松院長元尼や、上杉定勝の娘である長松院松嶺隠之尼も無難の下で得度しています。

著作

• - 『即心記』
• - 『自性記』
• - 『無難禅師道歌集』

その他、相川家、大村家、龍澤寺、細川家などに法語が伝えられています。

家族

• - 父：相川次郎左衛門道祐親直
• - 母：園
• - 妻：お栗、後にお房
• - 男子：野沢源左衛門元易親顕
• - 女子：お三

参考文献

• - 公田連太郎『至道無難禅師集』
• - 梶浦逸外「至道無難禅師に就いて」
• - 東嶺円慈「開山至道無難庵主禅師行録」
• - 今泉淑夫「至道無難」『国史大辞典』
• - 外池禅雄「愚堂国師と至道無難禅師」『暁鐘』

関連項目

• - 東北寺
• - 正燈寺
• - 大村彦太郎 (初代)
• - 三輪執斎

外部リンク

• - 『即心記』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
• - 『自性記』 - 国立国会図書館デジタルコレクション

至道無難は、その生涯を通じて禅の教えを追求し、多くの人々に影響を与えました。彼の思想と行動は、現代の私たちにとっても、人生を豊かにするヒントを与えてくれるでしょう。

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