道鏡慧端

道鏡慧端（正受老人）

道鏡慧端（どうきょう えたん、1642年12月13日 - 1721年11月24日）は、江戸時代に活躍した臨済宗の僧侶です。正受老人（しょうじゅろうじん）の名で広く知られています。信州松代藩主、真田信之の庶子として生まれました。

生涯

慧端は、1642年、松代藩主真田信之の庶子として飯山城で誕生したと伝えられています。生母は真田信之の側女で、李雪尼と称しました。13歳の時、禅僧から「子ニ個ノ観世音菩薩アリ」（自分の心の中に観音を見つけよ）という言葉を受け、自己探求を始めます。16歳で悟りを開いたとされます。

仏道への強い帰依の念を抱いた慧端は、師を求めて江戸や京へ行くことを望みましたが、藩主の預かりの身分であったことと、母の懇願により断念。19歳で、藩主松平忠倶の参勤交代に随行して江戸へ赴き、麻布東北庵の至道無難のもとで出家しました。翌年には印可を得て「道鏡」と名乗り、東北地方を行脚。3年後、東北庵が禅河山東北寺として改築され、無難から住職を勧められますが、固辞し、飯山へ帰郷。

帰郷後、藩主忠倶から小庵を贈られ、無難から与えられた「正受」の扁額を掲げ、正受庵と名付けました。その後、無難の弟子の洞天が東北寺の後継者となったことを機に、無難の元で再び修行に励みます。無難の入寂後、再び飯山に戻り、生母も剃髪して慧端の弟子となりました。

藩主忠倶は一山の建立と200石の寄進を申し出ますが、慧端は「沙門は三衣一鉢有れば足る」として謝絶。1708年には、白隠慧鶴が正受庵を訪れます。白隠は、高田英巌寺で鐘の音を聞いて悟りを開いたものの、慢心していたとされています。慧端は、白隠の慢心を見抜き、時には厳しく指導し、ついに白隠は正受を認められるに至りました。

慧端は、1721年に80歳で亡くなるまでの45年間、水戸光圀からの二度の招請も辞退し、正受庵で臨済禅のために精進しました。生涯、世俗的な栄達には目もくれず、最下位の僧階のまま、その住庵も寺格を持たない状態を貫き通しました。

人物

道鏡慧端は、その厳格な指導と、世俗的な名誉を求めない清貧な生き方で知られています。特に、白隠慧鶴の師として、その悟りを導いたことは、禅宗史において重要な出来事として語り継がれています。正受庵で多くの弟子を育成し、その教えは後世に大きな影響を与えました。

参考文献

古田紹欽『愚堂・無難・正受』弘文堂書房, 1944
飯山市誌編纂専門委員会編『飯山市誌 歴史編（上）』飯山市・飯山市誌編纂専門委員会, 1993
正受庵担雪会編『正受庵』正受庵担雪会, 2008

関連文献

阿部芳春編『正受老人』信濃毎日新聞社・太田村臥月庵, 1931
今北洪川纂訂、林博訳註『正受老人崇行録』信濃毎日新聞社, 1935
酒井昭道編『正受惠瑞』正受庵, 1971
信濃教育会編『正受老人集』至元社, 1975
古田紹欽『近世の禅者』講談社〈古田紹欽著作集5〉, 1980
市原豊太『無難、正受』講談社〈日本の禅語録15〉, 1979

関連項目

正受庵
白隠慧鶴
仙厓義梵

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