臼砲艦

臼砲艦の概要

臼砲艦（きゅうほうかん）は、艦首に臼砲を総兵装とした木造の帆走軍艦です。一般的に英語では、bomb ketchやbomb ship、またはこれらを総称するbomb vesselと呼ばれます。日本語ではボムケッチや爆弾ケッチという呼称もあり、固定目標への砲撃に特化した設計が特徴です。近代において、臼砲艦が担っていた役割は、モニター艦や多目的戦闘艦に引き継がれることとなります。

発展と設計

臼砲艦はフランス海軍によって初めて考案され、1681年にダンケルクで建造された最初の艦船Bombardeによって実現しました。初期のフランスの舟は、ビームの両側に臼砲を固定し、照準にはスプリング索を使用するなど、当時としては新しい試みが見られました。しかし、その後ユグノーの亡命者を通じてイギリスやオランダに導入され、18世紀を通じて多数の改良が行われました。

特にイギリスでは、臼砲を中心線上に配置した回転砲架が発明され、これにより両舷固定の構造が急速に廃れました。この回転砲架は、発砲時の反動に耐えるため、強靭な船体構造によって支えられており、そのフレームの隙間は弾薬庫として活用されました。

船体と操縦性

初期の臼砲艦は、2本マストのケッチ型に帆装していましたが、その操縦性は必ずしも良好ではありませんでした。これは、臼砲を搭載するために通常より艦尾寄りにマストが設置されていたためです。この課題を克服するため、1770年代以降のイギリスの艦船はシップ形式に設計され、3本マストの艦が主流となりました。これらの艦では、艦の前部のマストに鎖を使って索具が保護されることが多くなりました。

榴弾と弾薬管理

臼砲は、当時の海軍において榴弾を使用可能な唯一の火砲でした。榴弾の大量貯蔵は危険と見なされていたため、通常、臼砲艦は榴弾とその発砲指揮を行う士官を搭載した弾薬輸送船と行動を共にしました。

名称と費用

臼砲艦の名称は、火山や爆発に関連する言葉から取られることが一般的です。また、一部の艦船には地下世界に関係する名前が付けられました。異なる艦船が臼砲艦に改造される際には、通常、元の名前を維持することが多いです。

高度に専門化された臼砲艦はその建造コストが非常に高く、主に二次的な任務としてスループ活動を行いましたが、その活動は限られていました。それにもかかわらず、耐摩耗性の高い船体構造を活かし、何隻かは極地探検に用いられました。特に、エレバスやテラーは著名で、これらの艦に由来する南極の火山も存在します。

著名な臼砲艦と戦闘

1770年代には、レースホースやカーカスが補強されて北極探検に向かうこととなります。この遠征には若きホレーショ・ネルソンも参加しました。また、臼砲艦のディスカヴァリーやエクスプロージョン、ヘクラ、テラーなどがコペンハーゲンの海戦に参戦しました。

さらに、アメリカ国歌には「bombs bursting in air」との表現があり、これはボルティモアの戦いでのボルケーノなどの艦によって実現されたものです。

臼砲艦は、その特異な設計と運用により、海軍の歴史において重要な役割を果たした艦船の一形態です。

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