舟戸藩

舟戸藩とは

舟戸藩（ふなとはん）は、江戸時代前期から中期にかけて、下総国葛飾郡舟戸村（現在の千葉県柏市船戸付近）に存在した藩です。藩主は本多氏で、一時的に廃藩となったものの、後に再立藩されました。また、藤心村（現在の柏市藤心）にも陣屋があったため、藤心藩（ふじこころはん）と呼ばれることもあります。

藩の成立と変遷

1616年、徳川家康の家臣であった本多正重が1万石の大名となり、舟戸藩が成立しました。正重は、本多正信の弟で、武勇に優れ、関ヶ原の戦いなどにも従軍した人物です。しかし、正重は間もなく隠居し、相続の際に本多家は8000石の旗本となりました。これにより、舟戸藩は一旦廃藩したと見なされます。

その後、本多氏は引き続きこの地域を知行地として支配し、1688年に本多正永が加増を受け再び大名となったため、当地に再立藩しました。しかし、1703年に正永は上野国に領地を与えられ、沼田藩に移転しました。本多家は沼田藩、そして駿河田中藩へと移りますが、下総国内の約1万石は飛び地として幕末まで存続し、舟戸・藤心の両陣屋も引き続き使用されました。

藩主・本多氏

舟戸藩の藩主は、本多氏です。初代藩主の本多正重は、徳川家康の重臣・本多正信の弟であり、武将として活躍しました。正重の後は、養子の正貫、正直、そして正永が藩主を務めました。本多正永は、寺社奉行や若年寄を務めた人物です。最終的に老中となり、知行高は4万石まで加増されました。

舟戸と藤心の陣屋

舟戸藩には、舟戸村と藤心村の二箇所に陣屋が置かれました。舟戸陣屋は、利根川に面しており、水海道・下妻方面への近道として利用されていました。一方、藤心陣屋は、中世には相馬御厨内にあった古い郷村でした。

これらの陣屋は、本多氏が下総国の所領を支配するための拠点として機能しました。舟戸陣屋は「中相馬領」を、藤心陣屋は「南相馬領」をそれぞれ管轄し、村々への行政命令の伝達や年貢徴収などを行いました。

領地と支配

本多氏の下総領は、現在の柏市、流山市、野田市、我孫子市、松戸市、鎌ヶ谷市、市川市などにまたがる地域でした。これらの地域は、中世には相馬郡とも呼ばれ、葛飾郡との境界が曖昧な場所でした。

本多氏による下総の飛び地支配は、領民にとって過酷なものではなかったようで、善政として評価されています。幕末期には、流山郊外の加村台に加村陣屋が築かれ、田中藩下総領の支配拠点となりました。この加村陣屋は、明治初年には葛飾県・印旛県の県庁として使用されました。

その後

明治維新後の1868年、田中藩本多家は安房国長尾藩に移されました。この際、下総領は本多家の手を離れ、下総知県事の管轄下となりました。これに対し、田中藩下総領の領民からは、本多家領のまま存続することを求める運動が起こりました。

1889年の町村制施行により、舟戸村とその周辺の村が編成した行政村は、田中藩の旧領であったことから「田中村」と名付けられました。田中村は1954年まで存続し、その旧村域は現在の柏市田中地区となっています。また、2005年に地区内に開業したつくばエクスプレスの駅は、柏たなか駅と名付けられました。

まとめ

舟戸藩は、一時的に廃藩となりながらも、再立藩を経て、下総国における本多氏の支配を支えた藩でした。本多氏による統治は、領民からの評価も高く、その歴史は現代の地名にも残っています。

この文章は、舟戸藩の歴史、藩主、陣屋、領地、そしてその後の変遷についてまとめたものです。より深く理解するために、参考文献の参照もおすすめします。

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