航空科 (陸上自衛隊)

陸上自衛隊航空科

陸上自衛隊の航空科は、陸上部隊を航空面から支援する専門職種です。諸外国の陸軍航空隊に相当し、その職種標識は浅葱色が用いられます。主な任務は、ヘリコプターなどの航空機を用いた、ヘリ火力戦闘、航空偵察、空中機動、人員輸送などで、地上部隊の作戦遂行を円滑に進めるための重要な役割を担います。

概要

航空科は、方面航空隊に所属する航空野整備隊による航空機の整備、管制気象部隊による航空交通管制・気象予報など、航空機の運航を支える活動も行います。災害時には、方面通信群と連携し、被災地の映像を主要司令部に送信することで、迅速な災害派遣部隊の編成に貢献します。

航空科部隊

航空科最大の部隊は、陸上総隊直轄の第1ヘリコプター団（木更津駐屯地）です。方面隊には方面航空隊が、師団・旅団には直轄の飛行隊（第12旅団と第15旅団はヘリコプター隊）が配置されています。航空管制部隊としては、防衛大臣直轄の中央管制気象隊と、各方面航空隊直轄の方面管制気象隊があります。

陸上自衛隊航空学校（三重県伊勢市）が航空科の教育を担っており、飛行教導隊が教育支援を行っています。航空機の整備は専門性が高く、方面航空隊の指揮下で実施されます。陸上自衛隊ではヘリコプターを主力としていますが、連絡偵察用に固定翼機も少数配備しています。固定翼機の操縦教育は海上自衛隊に委託されており、海上自衛隊や海上保安庁の操縦訓練生と共に訓練を受けます。

航空管制は、飛行場管制・航空気象観測を主に行います。札幌飛行場、宇都宮飛行場、明野飛行場では進入管制区を設け、札幌飛行場では民間機に対する管制も行います。航空管制要員は、航空自衛隊第5術科学校で教育を受けます。

航空科と同種の部隊として、方面航空隊本部、方面ヘリコプター隊、対戦車ヘリコプター隊、飛行隊、旅団ヘリコプター隊、方面管制気象隊、航空野整備隊、中央管制気象隊などがあります。

航空科の操縦士養成

陸上自衛隊の操縦士は、入隊後、地上部隊での勤務経験を経て、適性のある陸曹が「陸曹航空操縦課程（FEC）」に選抜されます。このシステムは、航空科の「航空至上化」を防ぎ、地上部隊との連携を重視したパイロット育成を目的としています。

FECの他に、幹部自衛官向けの「幹部航空操縦課程（POC）」も存在します。2016年からは女性操縦士も攻撃ヘリコプターの操縦教育を受けることが可能になり、2017年には初の女性対戦車ヘリコプター操縦士が誕生しました。また、航空科では、都道府県警察航空隊のヘリコプター操縦士の養成も受託しています。

主な航空機

陸上自衛隊航空科では、以下の航空機を運用しています。

回転翼機

多用途ヘリコプター：UH-1J、UH-2、UH-60JA
輸送ヘリコプター：CH-47J/JA
観測ヘリコプター：OH-1
対戦車ヘリコプター：AH-1S
戦闘ヘリコプター：AH-64D
特別輸送ヘリコプター：EC-225LP
練習ヘリコプター：TH-480B

固定翼機

連絡偵察機：LR-2

航空科部隊の一覧

第1ヘリコプター団

陸上総隊直轄の航空科部隊で、10個飛行隊を擁する最大規模の部隊です。木更津駐屯地に主力部隊が駐屯し、全国を範囲とする機動運用部隊です。VIP輸送を担う特別輸送ヘリコプター隊も隷下にあります。

方面航空隊

各方面隊直轄の航空科部隊で、各方面隊に1個ずつ配置されています。対戦車ヘリコプター隊や方面ヘリコプター隊を主力とし、方面管制気象隊と方面航空野整備隊が支援を行います。

方面ヘリコプター隊

各方面航空隊隷下の大隊規模部隊で、多用途ヘリコプターなどを運用します。北部、東北、東部、中部、西部の各方面隊に配置されています。

対戦車ヘリコプター隊・戦闘ヘリコプター隊

対戦車ヘリコプター隊は、対戦車ヘリコプターを装備し、航空支援を任務とします。第1、第2、第4、第5対戦車ヘリコプター隊があり、かつては第3対戦車ヘリコプター隊も存在しました。第3対戦車ヘリコプター隊は、第1戦闘ヘリコプター隊に改編されました。

独立飛行隊

第1ヘリコプター団隷下の航空科部隊で、第102飛行隊から第109飛行隊があります。

師団（旅団）飛行隊

各師団・旅団隷下の航空科部隊で、各師団・旅団にそれぞれ飛行隊が置かれています。第1飛行隊から第15飛行隊までがありましたが、一部は廃止されました。

旅団ヘリコプター隊

第12旅団と第15旅団に所属する航空科部隊です。空中機動能力を強化している第12旅団と、離島配備部隊である第15旅団のみがヘリコプター隊となっています。

方面管制気象隊

各飛行場での航空管制・航空気象業務や、野外での飛行部隊支援を主任務とする部隊です。北部、東北、東部、中部、西部の各方面隊に配置されています。

航空野整備隊

方面隊の飛行部隊や航空機などの航空野整備や航空補給を行う専門部隊です。北部、東北、東部、中部、西部の各方面隊に配置されています。

第1ヘリコプター野整備隊

第1ヘリコプター団の航空機整備や航空補給を行います。

陸上自衛隊中央管制気象隊

防衛大臣直轄部隊で、陸上自衛隊の気象業務を統括します。

特別輸送ヘリコプター隊

第1ヘリコプター団隷下の航空科部隊で、VIP輸送を担当します。

第1輸送ヘリコプター群本部及び本部付隊

第1ヘリコプター団隷下の航空科部隊です。

輸送航空野整備隊

第1ヘリコプター団輸送航空隊隷下の航空科部隊です。

輸送航空隊本部及び本部中隊

第1ヘリコプター団隷下の航空科部隊です。

連絡偵察飛行隊

第1ヘリコプター団隷下の航空科部隊です。

飛行教導隊

陸上自衛隊航空学校隷下の教育支援部隊です。

陸上自衛隊航空学校

陸上自衛隊の航空科隊員の教育を担う機関です。

航空科部隊の沿革

航空科部隊は、保安隊時代から陸上自衛隊の発足、その後の組織改編を経て現在の体制に至っています。1954年の北部方面航空隊の新編、1962年の方面航空隊の改編、1986年の対戦車ヘリコプター隊の発足など、数々の変遷がありました。

廃止された部隊一覧

過去には、第12飛行隊、第101飛行隊、第15飛行隊、教育支援飛行隊、第3対戦車ヘリコプター隊など、多くの部隊が廃止されています。また、航空整備部隊も多くの改編・廃止が行われてきました。

脚注

詳細は各部隊の項目を参照してください。

関連項目

陸曹航空操縦学生
AH-X（AH-1Sの後継機種導入計画）
航空士 (自衛隊)

外部リンク

* 陸上自衛隊の公式サイトへのリンク'>陸上自衛隊とは > 職種 > 航空科

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