花見山公園

福島市の花見山公園：四季折々の花と絶景が織りなす桃源郷

福島県福島市にある花見山公園は、阿武隈川右岸の丘陵地中腹に広がる、無料開放された私有の花卉園芸農園です。中心市街地から南東に位置し、春には色とりどりの花々が咲き乱れる、人気の観光スポットとして知られています。

公園の立地と景観

公園は、阿武隈高地のくるみ川が形成した谷底平野に隣接する丘陵地（標高約110～180m）に位置しています。周囲は丘陵に囲まれ、いたるところで花卉園芸が営まれています。春には、園内だけでなく周辺地域全体が、ソメイヨシノ、レンギョウ、ボケ、モクレン、ツバキなど多様な花々で埋め尽くされ、まさに「百花繚乱」の景観を呈します。特に、切花出荷用の東海桜は圧巻です。写真家の秋山庄太郎氏も「福島に桃源郷あり」と形容したほど、息を呑むような美しさです。冬にはロウバイが見頃を迎えるなど、四季を通して変化に富んだ景色を楽しむことができます。

歴史：養蚕から園芸への転換

花見山公園の土地は、江戸時代から養蚕と林業を営む阿部家が所有していました。しかし、世界恐慌や昭和恐慌の影響を受け、家業は苦境に陥ります。阿部家は、生糸価格の暴落により養蚕業からの収入減に苦しみ、家と山を手放さざるを得ませんでした。

その後、関東大震災後の復興過程で花卉市場が盛んになるにつれ、阿部家は山に自生する花を販売するようになり、生け花需要の高まりから生計を立てることができるようになりました。その後、花の栽培に乗り出し、少しずつ土地を開墾しながら作付けを広げていきました。太平洋戦争中は食糧増産のため、花卉栽培から麦・豆・芋などの作物栽培に切り替えるなど、時代の変遷を反映した歴史を持っています。

戦後からの発展と観光地化

終戦後、阿部家は花卉栽培を再開し、1950年代後半には、開花時期には山が花で埋め尽くされるようになり、観光客が訪れるようになりました。阿部一郎氏は、戦争で苦しんだ人々を元気づけたいという思いから、1959年に公園を無料開放しました。その後、トイレや東屋、展望台などの施設を整備し、観光客の増加に貢献しました。

秋山庄太郎氏による紹介も全国的な知名度向上に大きく貢献しました。観光客の増加に伴い、交通渋滞対策として、一般車両の進入規制やシャトルバスの運行、遊歩道の整備などが行われ、環境整備も進められてきました。東日本大震災では一時的に観光客数が減少しましたが、その後も多くの観光客が訪れています。

公園の特徴

花見山公園の大きな特徴は、私有地でありながら無料開放されている点です。そのため、花見でよく見られる宴会などは禁止されています。また、花木の剪定方法が独特で、地上から1mほどの部分を切り取るため、筆や箒を逆さにしたような樹形となっています。この特徴的な樹形と、多様な樹種を植栽していること、丘陵地ならではの眺望が相まって、他に類を見ない美しい景観を作り出しています。

アクセス

福島駅からバスや徒歩でアクセス可能です。花見シーズンには、一般車両の進入規制が行われますので、公共交通機関を利用するのがおすすめです。臨時バス「花見山号」やJRの臨時列車「ふくしま花見山号」も運行され、アクセスが容易になっています。

周辺イベント

花見山公園の観光客を市内中心部に呼び込むため、福島駅前などでは「ふくしま花のまちフェスティバル」などのイベントが開催されています。

まとめ

花見山公園は、阿部家の歴史と自然が織りなす、独特の景観と魅力を持つ観光地です。無料開放という寛大な心遣い、そして、四季折々の美しい花々、そして吾妻連峰の眺望は、訪れる人々に忘れられない思い出を残してくれるでしょう。

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