若森章孝

若森章孝（わかもりふみたか、1944年 - ）は、日本のマルクス経済学者で、関西大学の名誉教授です。静岡県に生まれ、横浜国立大学経済学部を卒業後、名古屋大学大学院経済学研究科で修士課程を修了しました。大学院では平田清明氏などの指導を受け、経済学の研究に励みました。

研究活動

1971年、関西大学経済学部の助手として着任し、関西大学大学院博士課程に進学しました。ここでは重田晃一氏に師事しましたが、博士課程を中退。その後、岡山大学助教授、関西大学経済学部助教授を経て教授に就任しました。1984年から85年にかけてフランスに留学し、レギュラシオン理論を深く学びました。1994年には、著書『資本主義発展の政治経済学接合理論からレギュラシオン理論へ』で関西大学から経済学博士号を授与されています。2014年に関西大学を定年退任し、長年の教育・研究活動に終止符を打ちました。2023年には、その功績が認められ、瑞宝中綬章を受章しました。

研究分野

若森氏の専門は、マルクス経済学を基盤としたレギュラシオン理論です。レギュラシオン理論とは、資本主義経済の歴史的発展と制度的変動を分析する理論であり、若森氏は、この理論を用いて、現代資本主義の動態や社会経済システムの構造を研究しました。また、新自由主義やグローバリゼーション、フレキシキュリティといった現代社会の重要なテーマについても、政治経済学的な視点から考察を重ねています。

主な著書と翻訳

若森氏は、数多くの著書と翻訳を手がけています。主な著書としては、『資本主義発展の政治経済学接合理論からレギュラシオン理論へ』(1993年)、『レギュラシオンの政治経済学 21世紀を拓く社会=歴史認識』(1996年)、『新自由主義・国家・フレキシキュリティの最前線グローバル化時代の政治経済学』(2013年)などが挙げられます。これらの著作では、レギュラシオン理論を基盤としつつ、資本主義の歴史的発展や現代社会の諸問題を分析しています。

翻訳書も多数あり、アラン・リピエッツやミシェル・アグリエッタといった、レギュラシオン理論の主要な提唱者の著作を日本語に翻訳し、日本におけるレギュラシオン理論の普及に貢献しました。特にアラン・リピエッツの『奇跡と幻影世界的危機とNICS』や『レギュラシオン理論の新展開エコロジーと資本主義の将来』などの翻訳は、日本の経済学研究に大きな影響を与えました。

その他の活動

若森氏は、研究活動の傍ら、社会的な問題にも積極的に関与しており、環境問題や労働問題など、現代社会が抱える様々な課題に対する考察を行ってきました。また、多くの研究者と共同で研究プロジェクトを組織し、社会科学の発展に貢献しています。

影響

若森章孝の研究は、日本の経済学、特にマルクス経済学とレギュラシオン理論の研究において重要な位置を占めています。彼の著作や翻訳は、多くの研究者や学生にとって必読の文献となっており、現代社会の複雑な問題を理解するための重要な視点を提供しています。

主な著書

『資本主義発展の政治経済学接合理論からレギュラシオン理論へ』関西大学出版部 1993年
『レギュラシオンの政治経済学 21世紀を拓く社会=歴史認識』晃洋書房 1996年
『新自由主義・国家・フレキシキュリティの最前線グローバル化時代の政治経済学』晃洋書房 2013年

主な共編著

『歴史としての資本主義グローバリゼーションと近代認識の再考』松岡利道共編著青木書店 1999年
『入門・政治経済学』小池渺,森岡孝二共著ミネルヴァ書房 2007年
『EU経済統合の地域的次元クロスボーダー・コーペレーションの最前線』八木紀一郎,清水耕一,長尾伸一共編著ミネルヴァ書房 Minerva現代経済学叢書 2007年
『食と環境問われている日本のフードシステム』編著晃洋書房 2008年

主な翻訳書

ピーター・リムケコ,ブルース・マクファーレン編『周辺資本主義論争従属論以後』岡田光正共訳柘植書房(新TT選書) 1987年
アラン・リピエッツ『奇跡と幻影世界的危機とNICS』井上泰夫共訳新評論 1987年
ミシェル・アグリエッタ『資本主義のレギュラシオン理論政治経済学の革新』山田鋭夫,大田一廣,海老塚明共訳大村書店 1989年
アラン・リピエッツ『勇気ある選択ポストフォーディズム・民主主義・エコロジー』[藤原書店]1990年
ピエール・エリティエ『オルタナティブエコノミーへの道時短がひらく21世紀』監訳大村書店 1991年
アラン・リピエッツ『ベルリンーバグダッドーリオ冷戦後の世界経済と地球環境問題』若森文子,井上泰夫共訳大村書店 1992年
アラン・リピエッツ『レギュラシオン理論の新展開エコロジーと資本主義の将来』井上泰夫共編訳大村書店 1993年
アラン・リピエッツ『緑の希望政治的エコロジーの構想』若森文子共訳社会評論社 1994年
エティエンヌ・バリバール,イマニュエル・ウォーラーステイン『人種・国民・階級揺らぐアイデンティティ』須田文明,岡田光正,奥西達也共訳大村書店 1995年
ミシェル・アグリエッタ『資本主義のレギュラシオン理論政治経済学の革新』大田一広,山田鋭夫,海老塚明共訳大村書店 2000年
ドミニク・メーダ『労働社会の終焉経済学に挑む政治哲学』若森文子共訳法政大学出版局叢書・ウニベルシタス 2000年
アラン・リピエッツ『レギュラシオンの社会理論』監訳,若森文子訳青木書店社会学の思想 2002年
フランス緑の党『緑の政策宣言』若森文子共訳緑風出版 2004年
G.M.ホジソン『経済学とユートピア社会経済システムの制度主義分析』小池渺,森岡孝二共訳ミネルヴァ書房 Minerva人文・社会科学叢書 2004年
M.アグリエッタ, B.ジェソップ『金融資本主義を超えて金融優位から賃金生活者社会の再建へ』斉藤日出治共訳晃洋書房 2009年
カール・ポランニー『市場社会と人間の自由社会哲学論選』若森みどり、植村邦彦共編訳大月書店 2012年

論文

cinii 若森章孝

外部リンク

* 若森章孝研究室

脚注

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