若鷲の歌

若鷲の歌

「若鷲の歌」は、戦意高揚映画『決戦の大空へ』の主題歌として、1943年（昭和18年）に発表された日本の軍歌です。全4番からなり、別名「予科練の歌」としても知られています。

制作背景

この歌は、海軍飛行予科練習生（予科練）の募集を目的とした映画『決戦の大空へ』の主題歌として制作されました。作詞は西條八十、作曲は古関裕而が担当しています。二人は土浦[[海軍航空隊]]に一日入隊し、その体験をもとにこの歌を作りました。特に、壁に貼られた予科練生徒募集のビラに描かれた予科練生の姿と胸の七つのボタンから着想を得て、第一聯が生まれたと言われています。

当初、別の長調のメロディが構想されていましたが、土浦へ向かう途中に古関が思いついた短調のメロディが採用されました。この短調の曲は、同行した波平暁男に歌って聞かせ、さらに予科練生たちに直接聴かせて選ばれ、現在の形に決定しました。

楽曲の特徴と影響

作曲を担当した古関裕而は、『決戦の大空へ』を観に来た小学生たちが「若い血潮の予科練の」と歌いながら出てくるのを見て驚いたと述べています。この曲は、短調ながらも単純明快で暗さがないため、多くの少年たちの心を掴んだとされています。

戦後、土浦[[海軍航空隊]]跡地に建てられた自衛隊武器学校の雄翔園に歌碑が建てられた際、古関は「15～16歳の練習生が選んだ曲については、最後まで、どうかな？という不安があったが、約束が約束故、そのまま主題歌とした」と語っています。さらに、この歌に刺激され、発奮して予科練に志願した青少年が多くいたことに責任を感じ、英霊の冥福を祈ると述べています。

その後

後のステレオ録音版では、波平暁男の代わりに三鷹淳が歌唱を担当しました。

1968年には、西郷輝彦がこの歌をカバーし、シングルとして発売しました。

後世の映画での使用

「若鷲の歌」は、戦後も様々な映画で使用されています。

『日本のいちばん長い日』(1967年)：終戦の日の政府高官たちの攻防と陸軍青年将校によるクーデター計画を描いた作品で、特攻隊員の出撃シーンで繰り返し使用され、効果的に挿入されています。
『あゝ予科練』(1968年)：西郷輝彦のカバーバージョンが主題歌として使用されました。
『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973年)：終戦直後にヤクザになった特攻崩れの青年が、自殺を試みようとする際にこの歌を口笛で吹くシーンがあります。

その他

中沢啓治の漫画『はだしのゲン』では、主人公の兄が予科練仲間の自殺後、「戦争なんか終わってくれ」と涙を流しながら「予科練の歌」を口ずさむ場面があります。
* 海上自衛隊の航空学生の学生歌には、『若鷲の歌』と似たタイトルの『海の若鷲』がありますが、これは別の曲です。

「若鷲の歌」は、戦時中の象徴的な歌でありながら、戦後も多くの人々に影響を与え続けている楽曲と言えるでしょう。

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