英国聖公会宣教協会

英国聖公会宣教協会（CMS）とは

英国聖公会宣教協会（Church Mission Society, CMS）は、1799年にイングランド国教会によって設立された宣教団体です。当初は「アフリカ・東方宣教会」として、福音主義的な立場からアジアやアフリカへの宣教活動を開始しました。設立当初からウィリアム・ウィルバーフォースなど著名な人物が関わり、世界各地への宣教師派遣を積極的に行いました。

設立と初期の活動

1799年、ロンドンでクラパム派の支援を受けて設立されたCMSは、当初アフリカと東方への宣教を目的としていました。ウィリアム・ウィルバーフォースは初代総主事の要請を辞退し、副主事として活動を支えました。最初の宣教師は1804年に派遣され、その後、イギリス人宣教師も加わり、活動範囲を拡大しました。

初期の活動としては、イギリス東[[インド会社]]に派遣されるチャプレンの選任などが挙げられます。また、1925年にはコプト教会やエチオピア教会に関する資料収集や聖書翻訳にも取り組みました。ウィリアム・ジョエットによるアムハラ語への聖書翻訳は、後のエチオピアへの宣教活動を大きく後押ししました。

世界各地への活動展開

インドでは、識字率の高いケーララ州を中心に教育活動を展開し、多くの学校を設立しました。ケーララ州やタミルナドゥ州には、現在でも多くのCMS関連の教育施設が存在します。

20世紀初頭には、協会の神学がリベラル派に傾斜し、保守的な福音派との間で論争が生じました。この結果、福音派は聖書教会派宣教協会（BCMS）として分裂し、後にクロスリンクスに改名しました。

2007年の時点で、CMSはアジア、アフリカ、ヨーロッパ、中東に186人の宣教師を派遣しており、訓練中の者や交換留学生を含めると704人が活動していました。活動範囲は50カ国に及び、年間予算は約900万ポンドで、主に個人や教区からの寄付によって賄われています。

オーストラリア本部

CMSオーストラリアは、福音主義的な傾向が強く、活発な宣教活動を展開しています。1825年にアボリジニへの宣教を目的としてシドニーで活動を開始し、その後、アボリジニの改宗を試みるも挫折しました。その後はオーストラリア出身の宣教師の養成に力を入れ、1888年には初のオーストラリア人宣教師がセイロンへ派遣されました。

1916年には国内の関連組織を統合して自立し、中国、インド、パレスチナ、イランなどへ宣教師を派遣しました。特に1927年以降は北オーストラリアとタンガニーカでの活動に注力しました。

ニュージーランド本部

ニュージーランドでは、1814年にサミュエル・マースデンが最初の宣教活動を開始しました。1815年には最初の伝道団を設立し、農場や学校を建設しました。しかし、資金を交易に頼った結果、マオリへの銃の販売など、問題も発生しました。

1830年代には活動範囲を拡大し、1840年までには新約聖書の多くがマオリ語に翻訳されました。CMSは、ヨーロッパ人の無法ぶりやマオリの伝統社会の破壊を理由に、イギリスによるニュージーランド併合を支持し、マオリの首長たちがワイタンギ条約に署名するよう説得しました。

1840年代から1850年代にかけて、CMSは最も影響力を持ちましたが、マオリ戦争の際には政府側についたため、マオリからの信頼を失うこともありました。1892年にはニュージーランド支部が独立し、海外宣教を積極的に展開しました。

日本での活動

CMSは、1873年にJ・パイパー司祭が来日し、築地でバイブルクラスを開いたことをきっかけに、日本での宣教活動を開始しました。1878年には聖パウロ教会を設立し、1887年には他の宣教団体と合同して日本[[聖公会]]を組織しました。

1890年にはB・F・バックストンが来日し、松江市で伝道活動を展開し、多くの日本人信徒を育成しました。彼の活動は「松江バンド」と呼ばれ、日本のきよめ派や福音派の源流の一つとなりました。

主な来日宣教師

CMSからは、多くの宣教師が日本に派遣され、宣教活動や教育、医療に貢献しました。主な来日宣教師としては、G・エンソル、H・バーンサイド、C・F・ワレン、ジョン・バチェラー、J・パイパー、P・K・ファイソン、ヘンリー・エヴィントン、ハーバート・モーンドレル、イライザ・グッドオール、A・F・チャペル、ウォルター・ウェストン、ハンナ・リデル、B・F・バックストンなどが挙げられます。

現在のCMS

現在、CMSは世界各地で宣教活動を展開しており、人道支援や開発援助など、その活動は多岐にわたります。また、世界宣教のネットワークを構築し、キリスト教の普及と社会貢献を目指しています。

CMSは、200年以上の歴史を持つ宣教団体として、世界各地の社会、文化、宗教に大きな影響を与えてきました。その活動は、キリスト教の普及だけでなく、教育や医療、人道支援など、多岐にわたる分野で貢献しており、現代社会においてもその役割は重要です。

もう一度検索