苻訓英

苻訓英（ふ くんえい）

苻訓英は、五胡十六国時代の後燕、昭文帝慕容熙の皇后です。前秦の重合侯苻謨の娘で、姉の苻娀娥も慕容熙の側室でした。

生涯

慕容垂が後燕を建国した際、苻氏一族の一部を収容し、父の苻謨は中山尹に任じられました。しかし、397年に慕容詳が中山で燕帝を僭称し、苻謨は巻き込まれて殺害されます。苻訓英は姉と共に難を逃れ、後に慕容熙の妻妾となりました。慕容熙が即位すると、貴嬪に封じられ、翌年には皇后となります。

苻訓英は、その美貌で慕容熙を魅了し、寵愛を一身に受けました。二人は贅沢な生活を送り、各地への巡幸を繰り返しました。白鹿山、青嶺、滄海への巡幸では、多くの兵士が寒さや飢えで命を落としました。慕容熙は彼女のために承華殿を建設しますが、そのために大量の土が必要となり、土の値段が穀物と同等にまで高騰しました。

405年、慕容熙が高句麗討伐に出征した際、遼東の城が陥落寸前になった時、慕容熙は「朕と皇后が輿を並べて入城するのを待て」と命じます。しかし、この間に城の防備が強化され、後燕軍は結局城を落とせずに撤退しました。

407年、苻訓英は病死します。慕容熙は悲しみのあまり、自らの死を願うほど嘆き悲しみ、棺の傍から離れませんでした。彼は棺の蓋を開け、自ら中に入り、苻訓英の亡骸と交わろうとしたと伝えられています。高陽王慕容隆の未亡人であった張氏を殉葬させ、公卿や庶民に巨大な陵墓を造らせました。慕容熙は「しっかりやれ、まもなく私も皇后のところに行く」と命令し、臣下には泣くことを強要し、泣けない者は罰したため、群臣は辛子を口に含んで涙を流したとされています。

翌月、慕容熙が苻訓英の埋葬のために都を出た隙に、馮跋らが反乱を起こします。慕容熙は捕らえられ処刑され、苻訓英の陵墓に合葬されました。

苻訓英には諡号は贈られておらず、慕容熙の諡号から昭文皇后と呼ばれています。

参考文献

『晋書』巻124「慕容熙載記」
『十六国春秋』
* 『資治通鑑』「晋紀」巻112 - 114

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