苻黄眉

苻黄眉（ふ こうび）

苻黄眉は、五胡十六国時代の前秦の皇族であり、初代皇帝苻健の甥にあたります。彼の生涯は、その才能と武勇、そして悲劇的な最期によって特徴づけられます。

生涯

苻黄眉は、その才幹がずば抜けており、勇猛にして威武を備え、優れた謀略を有していたと伝えられています。前秦の建国初期において、重要な役割を果たしました。

351年1月、叔父である苻健が前秦を興すと、苻黄眉は輔国将軍に任じられ、洛陽の鎮守を任されました。洛陽は当時、前秦にとって重要な拠点であり、その守りを任されたことは、苻黄眉への信頼の厚さを示しています。

353年7月、前秦の司空張遇が反乱を起こすと、苻黄眉は洛陽から西へ逃走しました。この反乱は鎮圧され、苻黄眉は後に衛大将軍に任じられ、淮南王に封じられました。これは、彼の功績と能力が認められたことによるものでしょう。

355年6月、苻健が没すると、子の苻生が即位しました。苻黄眉はかねてより苻生と親しかったため、寵遇を受けました。同年8月には、広平王に封じられています。しかし、苻生の治世は短く、その性格が災いして、多くの人々の不満を買うことになります。

356年4月、左光禄大夫強平が苻生の粗暴な振る舞いを厳しく諫めたため、獄に繋がれました。苻黄眉は建節将軍鄧羌・前将軍苻飛と共に、叩頭して処刑を思い止まるよう強く諫めました。強平は苻生の母の強皇太后の弟でしたが、苻生はこれに一切耳を貸さず、結局強平は処刑されました。苻黄眉は馮翊太守に任じられて左遷されましたが、苻生はその武勇を惜しんで殺害しなかったとされています。

357年4月、関中攻略を目論んでいた姚襄が軍を進めて杏城に駐屯し、従兄の姚蘭を遣わして敷城を攻撃し、さらにその兄である姚益・将軍王欽盧を遣わして北地にいる羌の諸部族を招集させました。諸部族は皆この呼び掛けに応じ、5万戸余りが付き従い、集まった兵は2万7千を数えました。苻黄眉は前将軍苻堅・鄧羌と共に歩兵騎兵合わせて1万5千を率いて姚襄討伐に向かいました。これに対して姚襄は、堀を深く塁を高くして守りを固め、軍を進めようとはしませんでした。鄧羌は姚襄の性格を分析し、挑発することで敵を誘い出す作戦を提案し、苻黄眉はこれに従いました。鄧羌の作戦は成功し、姚襄軍を撃破することに成功しました。姚襄を討ち取ると、敵軍は戦意を失い降伏しました。

苻黄眉は長安に帰還しましたが、苻生はこれを一切賞しませんでした。そればかりか、逆に幾度も衆人の面前で苻黄眉を侮辱したため、苻黄眉はこれに激怒し、苻生を殺害して自立しようと謀りましたが、事前に露見してしまい、誅殺されました。多数の王公・親戚が連座により殺されたと伝えられています。

苻黄眉の生涯は、前秦の初期における皇族の葛藤と権力闘争を象徴しています。彼は才能と武勇を持ちながらも、苻生の暴政と自身の野望によって、悲劇的な結末を迎えることとなりました。

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