強平

強平（きょう へい）は、五胡十六国時代の前秦に仕えた人物です。生年は不明ですが、356年に没しました。彼は氐族の出身であり、略陽郡の人でした。また、明徳皇后（苻健の妻）の弟にあたります。

351年1月、苻健が天王・大単于の位に即くと、強平は太傅に任じられました。太傅は皇帝を補佐する重要な役職であり、苻健からの信頼の厚さがうかがえます。

355年6月、苻健の甥にあたる苻生が即位すると、強平は左光禄大夫に任じられました。左光禄大夫もまた、皇帝の側近として政務に関わる重要な役職です。

強平はかねてより直言を好み、権力者や佞臣に対しても憚る事がありませんでした。彼の性格をよく表すエピソードとして、以下のようなものがあります。

356年4月、長安で大風が吹き荒れ、家屋や樹木が根こそぎ引き抜かれるという事態が発生しました。宮中は騒然となり、賊が忍び込んだという噂まで流れました。これに対し、苻生は賊を見つけたら心臓を抉り取ると布告しました。強平はこれに対し、「天が災異を降したのは、陛下の行いを戒めるためです。民を愛し神を敬い、刑罰を緩めて徳を重んじることで天の怒りを鎮めるべきです」と諫めました。さらに、苻生の振る舞いを厳しく批判しました。

しかし、苻生は強平の諫言を聞き入れませんでした。彼は強平が妖言を吐いたとして処刑しようとしました。強平が皇太后の弟であったため、苻黄眉・苻飛・鄧羌らは苻生に対し、処刑を取りやめるよう必死に諫めましたが、苻生は聞き入れませんでした。結局、強平は頭に鑿で穴を開けられ、殺害されました。

強平の死は、苻生の暴政を象徴する出来事として、歴史に名を残しています。彼の直言を厭わない姿勢と、民を思う心が、後世の人々に感銘を与えています。

参考文献

『晋書』 巻112
『資治通鑑』巻98 - 巻100
* 『十六国春秋』巻42

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