鄧羌

鄧羌（とう きょう）

鄧羌（生没年不詳）は、五胡十六国時代の前秦に仕えた武将。安定郡（現在の寧夏回族自治区中南部及び甘粛省一帯）出身。その武勇は並外れており、張蚝と共に「万人の敵」と恐れられた。

生涯

苻生の時代

若い頃から騎射に優れ、勇猛果敢であったという。苻生の時代に建節将軍に任じられた。

356年、前燕の慕容儁が侵攻してくると、鄧羌はこれを撃退し、敵将の慕輿長卿を討ち取るという大戦果を挙げた。

苻生の粗暴な振る舞いを諫めた際には、苻生の怒りを買い咸陽郡太守に左遷された。

357年、関中攻略を目論む姚襄討伐の際、鄧羌は計略を用いて姚襄を討ち取り、敵軍を降伏させた。

苻堅の時代

苻堅が即位すると、鄧羌は驍騎将軍に任じられた。

358年、張平が反乱を起こすと、鄧羌はその先鋒として張平の養子である張蚝を生け捕りにし、張平を降伏させた。苻堅は鄧羌の功績を称え、張蚝の武勇を期待し、彼らを常に側近に置いた。人々は彼らを「万人の敵」と呼んだ。

359年、平羌護軍高離が反乱を起こすと、鄧羌はこれを鎮圧した。同年、御史中丞に任じられた鄧羌は、王猛と共に綱紀粛正に尽力し、不正を暴き風紀を正した。その手腕を見た苻堅は、法による統治の重要性を認識したという。その後、尚書に昇進した。

南匈奴の張罔が反乱を起こすと、鄧羌は鎮圧を命じられ、瞬く間にこれを鎮圧した。365年、匈奴の曹轂・劉衛辰が反乱を起こすと、劉衛辰を生け捕りにした。

367年、苻双・苻柳らが苻堅に反乱を起こすと、鄧羌は王猛と共に苻柳討伐に向かった。鄧羌は夜襲を敢行し、敵軍を破り、苻柳を討ち取った。その後、苻廋を討伐し、陝城を陥落させた。

366年、李儼討伐に貢献し、建武将軍・洛州刺史となった。

369年、東晋の桓温が前燕討伐に乗り出すと、鄧羌は援軍として派遣され、東晋軍を撃退した。その後、前燕攻撃の際、洛陽を攻略し、慕容臧を破った。

370年、王猛を総大将とする前燕討伐軍に参加。潞川の戦いでは、王猛の命令に一度は背くも、最終的には慕容評軍に突撃し、大勝に貢献した。この戦いで前燕軍は壊滅的な打撃を受け、慕容評は単身で逃走した。前燕滅亡後、鄧羌は使持節・征虜将軍・安定郡太守・真定郡公に任じられた。

371年、王猛は鄧羌を司隷校尉に推薦したが、苻堅は鄧羌の才能を高く評価し、鎮軍将軍に昇進させた。

374年、蜀で張育・楊光らが反乱を起こすと、鄧羌は護羌校尉に任じられ、楊安と共に討伐に向かった。鄧羌は張育らを綿竹で討ち取り、益州を平定した。

376年、苻堅は苻洛に拓跋什翼犍を攻撃させ、倶難と鄧羌にも兵を与え合流させた。鄧羌は并州刺史・車騎将軍に任じられた。

逸話

苻堅は鄧羌の先祖である鄧禹を引き合いに出し、鄧羌との出会いを幸運だと語った。鄧羌は、光武帝にとっても鄧禹との出会いは幸運だったと応じた。

苻丕（後の前秦皇帝）に兵法を教授したという。

子孫

鄧羌には数人の子がおり、皆義烈をもって称えられた。

鄧景：苻丕の在位時に京兆尹となった。
鄧翼：前秦の河間相となり、後に後燕に降ると重職を歴任した。

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