苻飛

苻飛（ふ ひ）

苻飛（生没年不詳）は、五胡十六国時代の前秦に仕えた皇族の一人であり、左衛将軍や前将軍を歴任しました。創建期の前秦を支えた人物として知られています。

生涯

苻飛は、主に軍事面で活躍しました。

353年、西域の胡人である劉康が劉曜の子と偽り、平陽で晋王を自称して挙兵すると、苻飛は討伐軍を率いて平陽へ進軍し、劉康を捕らえるという功績を挙げました。

同年6月には、仇池へ侵攻を試みましたが、氐王楊初に撃退されています。その後、丞相苻雄と平昌王苻菁が歩兵と騎兵4万を率いて隴東に駐屯し、仇池への備えを固めました。

同年7月、前秦の将軍である劉珍と夏侯顕が鄠で反乱を起こすと、その勢力は数万人に膨れ上がりました。苻飛は苻法と共に鎮圧に当たり、同年12月には鄠を攻略して劉珍と夏侯顕を斬首し、反乱を鎮圧しました。

これらの功績により、苻飛は前将軍に任じられました。

355年6月、苻健が崩御し、子の苻生が跡を継ぎました。苻飛はかねてより苻生から信任を得ており、356年8月には新興王に封じられました。

356年2月、東晋の将軍劉度が4千の兵を率いて盧にいる青州刺史王朗を攻めました。苻生の命を受けた苻飛は劉度討伐に向かいましたが、苻飛が到着する前に劉度は退却しました。

同年4月、左光禄大夫強平が苻生の粗暴な振る舞いを強く諫めたため、苻生の怒りを買い、投獄され処刑されることになりました。苻飛は衛将軍苻黄眉と共に苻生の前に進み出て、処刑を思い止まるよう強く諫めました。強平は苻生の叔父にあたる人物であったため、苻飛らは強皇太后の名を挙げて諫言を続けましたが、苻生は聞き入れず、強平は処刑されました。苻生は苻飛をも処刑しようとしましたが、その武勇を惜しみ、扶風郡太守に左遷するにとどめました。

この出来事以降、苻飛の記録は史書から途絶えます。その1年後から苻飛龍という人物が登場しますが、関連性は不明です。苻飛龍は苻堅の末年まで前秦に仕えましたが、慕容垂の裏切りにより殺害されました。

人物・逸話

前秦の閻負と梁殊が前涼へ使者として赴いた際、前涼の涼州牧張瓘は彼らに前秦の人材について尋ねました。その際、張瓘は「驍勇・権略に長け、攻めれば必ず取り、戦に必ず勝つ。関張の流で、万人の敵となる者は、前将軍・新興王苻飛、建節将軍鄧羌、立忠将軍彭越、安遠将軍倶難、建武将軍徐成である」と答え、苻飛の名前を挙げてその武勇を高く評価しました。

参考文献

『晋書』巻8、巻112
『資治通鑑』巻99-100
* 『十六国春秋』巻34-35、巻41

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