苻健

苻健（ふ けん）：前秦の初代皇帝

苻健は、五胡十六国時代に存在した前秦の初代皇帝であり、激動の時代を生き抜き、前秦という国を築き上げました。

生涯

350年3月、父である苻洪が軍師の麻秋によって毒殺されるという悲劇に見舞われます。苻健は父の仇である麻秋を討ち、その後、自ら皇帝として即位しました。即位後には、甥にあたる苻堅を龍驤将軍に任命し、重用しました。

漢族の支持を得るため、三秦王の称号を廃止し、東晋に帰属する姿勢を示しました。その後、西に進軍し、350年8月には長安を拠点としていた豪族の杜洪を打ち破りました。351年1月には国号を大秦と定め、長安にて天王・大単于の位に就き、皇始と改元しました。

同年4月には、漢中から侵攻してきた東晋軍を撃退することに成功します。352年1月には皇帝を自称し、太子の苻萇を大単于に任じました。さらに同年4月には、東晋に反旗を翻し洛陽を占拠した張遇を支援するため、豫州刺史に任命しました。353年には、東晋の殷浩の策略により、甥の苻黄眉が洛陽から撤退を余儀なくされました。

354年2月、東晋の桓温による北伐を受け、漢族の離反や太子の苻萇を失うなどの苦境に立たされましたが、同年6月にはこれを撃退しました。この勝利によって、前秦は関中全域に勢力を拡大し、支配体制を確立しました。内政面では、豊陽に関市を設置し、東晋との通商を活発に行い、重商主義政策によって経済力の早期回復を図りました。

晩年は病に苦しみ、政務を執ることが難しくなったため、亡くなった太子の弟である三男の苻生を後継者としました。しかし、この状況下で甥の平昌王苻菁が自立を企て、兵を率いて東宮に侵入し、苻生を暗殺しようとしましたが失敗し、逆に殺害されるという事件も起こりました。

355年6月、苻健は病のため崩御しました。享年39歳。彼の死後、太子の苻生が皇帝として即位し、前秦を受け継ぎました。

苻健は、前秦の基礎を築き上げた重要な人物であり、その後の前秦の発展に大きく貢献しました。

参考文献

* 三崎良章『五胡十六国、中国史上の民族大移動』（東方書店、2002年2月）

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