茜部神社

茜部神社（あかなべじんじゃ）

岐阜県の県庁所在地である岐阜市の南部に位置する茜部地区に鎮座する古社です。

国の歴史書である延喜式神名帳に記載されている式内社としての格式を持ち、近代社格制度においては郷社に列せられていました。

古くからこの地域の総鎮守、産土神（うぶすながみ）として、住民からの厚い崇敬を集めています。

お祀りする神々

現在、茜部神社でお祀りされている主たる神々は三柱です。誉田別尊（ほむたわけのみこと）、息長帶比売命（おきながたらしひめのみこと）、そして武内宿禰（たけうちすくね）です。

このうち誉田別尊は応神天皇、息長帶比売命はその母である神功皇后を指し、両神は八幡信仰の中心的な存在です。当社の創建が宇佐八幡宮からの勧請であることからも、八幡神との深い結びつきがうかがえます。

なお、現在の祭神である武内宿禰は、歴史上の人物であり、神功皇后や応神天皇を補佐した忠臣とされています。

過去を振り返ると、明治時代の初めにあたる1868年（明治元年）までは、武内宿禰ではなく比売大神（ひめおおかみ）がお祀りされていました。比売大神もまた八幡信仰において重要な位置を占める神であり、祭神が変更された背景には、当時の社会情勢や宗教政策の影響があったと考えられています。

悠久の歴史を刻む

茜部神社の歴史は、千年以上の時を遡ります。神社の鎮座する茜部一帯は、奈良時代には東大寺の広大な荘園、「厚見荘」の一部であったことが知られています（後に茜部荘と改称）。

社の創建は、平安時代の初め、天長7年（830年）のことと伝えられています。九州にある八幡信仰の総本社、宇佐八幡宮より神霊をこの地に迎えた（勧請した）のが起源とされるのです。これは、全国各地に八幡宮が分社されるようになった中でも、非常に初期に位置づけられる創建年代であり、当社の歴史的な重要性を示しています。

創建当初の祭神は、現在の祭神から武内宿禰を除き、代わりに比売大神を加えた三柱でした。

さらに創建から間もない天長10年（833年）には、名高い僧侶である弘法大師空海によって、神宮寺としての成就院が建立されたという伝承も残されています。これは、神道と仏教が互いに影響を与え合う神仏習合の時代背景を物語る出来事です。

その後、南北朝時代から戦国時代にかけての動乱期にあっても、茜部神社は地域の守護神としての役割を果たしました。近隣に築かれた川手城、上茜部城、そして天下分け目の戦いにも関わる加納城といった重要な拠点に暮らす人々、特に武家からの崇敬を集めたのです。この時代、土岐氏や斎藤氏といった美濃国の支配者たちからの厚い保護を受けていたことが記録に残っています。

しかし、弘治2年（1556年）、斎藤道三の死後に起きた戦いの中で、社の建物は残念ながら焼失してしまうという悲運に見舞われました。

幸いなことに、神社はほどなく再建され、その後は戦国時代末期に台頭した織田氏、そして江戸時代を通じて加納城を治めた歴代の城主たちからの庇護を受け、その社勢を保っていきました。

明治時代に入ると、新政府の方針による神仏分離令や廃仏毀釈の流れの中で、神宮寺であった成就院は廃寺となりました。また、この時期に祭神の変更も行われています。明治元年（1868年）、それまでお祀りされていた比売大神が、武内宿禰に変更されたのです。これは、近代国家形成における宗教政策の一環であったと考えられています。

神社の重要な年中行事である例祭についても、時代の変遷とともに変化が見られます。かつては秋の10月15日に行われていた例祭は、昭和25年（1950年）に現在の4月5日に改められました。この変更は、岐阜市を代表する祭りである「岐阜まつり」（伊奈波神社の例祭）に日程を合わせることで、地域全体の祭りとの連携を図ったものとされます。

所在地とアクセス

茜部神社は、岐阜県岐阜市茜部寺屋敷3丁目135番地に鎮座しており、比較的アクセスしやすい場所にあります。

公共交通機関を利用する場合、JR岐阜駅や名鉄岐阜駅から出ている岐阜バスを利用し、「寺屋敷」バス停で下車すれば、そこから徒歩約3分ほどで到着します。

また、名古屋鉄道竹鼻線の西笠松駅からも、徒歩でおよそ12分程度の距離にあります。

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