草の根BBS

草の根BBSとは

草の根BBS（Bulletin Board System）は、主に個人やグループが運営していた小規模なパソコン通信システムを指します。1980年代後半から1990年代前半にかけて最盛期を迎え、地域に密着した情報交換の場として独自の文化を育みました。

興隆と衰退

1985年の電電公社民営化により電話回線が開放されたことが、草の根BBS誕生のきっかけとなりました。ニフティサーブやPC-VANといった商用パソコン通信サービスが大規模な会員数を誇る一方で、草の根BBSは趣味の範囲で運営され、独自の発展を遂げました。

1987年には約300局、1990年には約800局もの草の根BBSが存在していました。しかし、1995年頃からインターネットが普及し始めると、ダイヤルアップ接続環境の整備とともに、ウェブ上のBBSへと移行する動きが加速しました。2000年以降は、常時接続が普及したことでパソコン通信はほぼ完全に終息し、2018年時点で存続するホスト局はごくわずかとなっています。

特徴

草の根BBSの最大の特徴は、接続料が無料であることでした。利用者は電話代のみでサービスを利用でき、地域に根ざした情報交換が活発に行われました。大手パソコン通信とは異なり、アクセスポイントがホスト設置場所に限定されていたため、ローカル色の濃さが際立っていました。

大手のパソコン通信に飽き足らなくなった人々が、自由に掲示板の構成を決められる草の根BBSの運営に魅力を感じ、自らホストになるケースもありました。また、電気店やパソコンショップが宣伝やサポートを目的として運営する例も見られました。

モデムの高速化に積極的だったことも、草の根BBSの特徴の一つです。

機材

草の根BBSを開設するには、着信用電話回線、モデム、そしてホストプログラムをインストールしたパソコンが必要です。モデムを着信用に設定し、ホストプログラムを起動すれば、クライアントからの接続を待ち受ける状態になります。

ホストとして使用されるパソコンは、NECのPC-9800シリーズが一般的でしたが、MSXやFM-7など、様々な機種でホストプログラムが利用可能でした。ホストプログラムには、フリーウェアから商用まで様々な種類が存在し、それぞれ操作方法が異なりました。

機能

草の根BBSの主な機能は、掲示板、ファイルライブラリ、メール、チャットなどです。掲示板では様々な情報が交換され、ファイルライブラリではプログラムや画像、音楽などのデータが共有されました。メールは会員同士でのみ利用可能で、外部とのやり取りは制限されていました。チャットはホスト管理者と会員間で行われることが一般的でした。

運営

多くの草の根BBSは会員制を採用しており、ゲスト会員は一部の掲示板しか閲覧できないなどの制限がありました。会員登録はオンラインで行われることが多かったですが、住所確認が必要な場合もありました。

電話回線が1本しかない場合、同時に接続できるのは1人だけだったため、長時間の接続はマナー違反とされていました。複数の回線を持つ草の根BBSは、企業がバックについていたり、有料であったりすることが多かったようです。

掲示板への書き込みやファイルライブラリなど、コンテンツはユーザーからの提供に依存していました。そのため、ダウンロードばかりする会員や、チャットを長時間行う会員は、回線占有の弊害として批判されることもありました。また、ROM（Read Only Member）と呼ばれる、書き込みをせずに閲覧のみを行う会員も歓迎されない傾向がありました。

相互の連携

話題の共通する草の根BBS間では、掲示板の内容やメールを相互に交換する試みも行われていました。同一地域間では電話回線、遠隔地間ではフロッピーディスクやパケット通信などが利用されましたが、通信手段や費用、データ同期の問題などから、実験段階にとどまることが多かったようです。

開局告知

開局した草の根BBSを告知する方法としては、既存の草の根BBSでの宣伝、パソコン雑誌への掲載、『BBS電話帳』への掲載などがありました。

現在

現在では、ほとんどの草の根BBSが閉鎖されるか、インターネット上のウェブサイトに移行しています。ワープロ専用機のユーザーや視覚障害者、文字通信の愛好家向けに、ごく一部の草の根BBSがパソコン通信ベースで運営されていますが、過去の電話番号はほとんど利用されていません。

もう一度検索