華 (鉄道車両)

JR東日本 485系お座敷電車「華（はな）」

「華」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が1997年から2022年まで保有していたジョイフルトレインと呼ばれる種類の鉄道車両（電車）です。

概要

JR東日本東京地域本社（当時）は、かつてお座敷客車「なごやか」「江戸」、お座敷電車「宴」という3つの和式車両を所有し、主に中高年層の団体輸送に利用していました。しかし、客車編成は老朽化が進み、機関車牽引による速度面で電車に劣る点や、首都圏での運行におけるダイヤ作成上の制約が課題となっていました。

そこで、「なごやか」の代替として、新たな和式電車を製造することになりました。これが「華」です。

車両

6両編成の全車両の車体は東急車輛製造で製造され、先頭車2両の組み立てはJR東日本大宮工場（現・大宮総合車両センター）で、中間車4両の組み立ては東急車輛製造で行われました。資料によれば、1997年3月14日付で改造が大宮工場名義で施工されています。

いずれの車両も485系電車からの改造で、先頭車はクロ484形とクロ485形、中間車はモロ484形とモロ485形です。各車両の番号は、「リゾートエクスプレスゆう」と「宴」からの続番となっています。編成番号はG6＋G7編成で、後にTG02編成に変更されました。

1号車：クロ484-4（旧クハ481-28） - 定員24人
2号車：モロ484-7（旧モハ484-251） - 定員24人
3号車：モロ485-5（旧モハ485-149） - 定員28人
4号車：モロ484-6（旧モハ484-87） - 定員24人
5号車：モロ485-4（旧モハ485-87） - 定員28人
6号車：クロ485-2（旧クハ481-21） - 定員24人

全車両がグリーン車扱いでした。

コンセプト・デザイン

「心やわらぎ、楽しめる空間の提供」をコンセプトに、車体外観も角のない、やわらかさを強調したデザインとされました。

改造内容

車体は「宴」と同様に丸みを帯びた形状を新造し、床下機器と走行装置は種車の485系のものをそのまま使用しました。車体断面は215系電車とほぼ同じ車両限界ですが、PS26-1形集電装置（パンタグラフ）の搭載と集電装置取り付け部分の低屋根化により、中央東線への入線も可能となりました。しかし、信越本線の横川 - 軽井沢間の通過対策（横軽対策）は、同区間の廃止時期が近かったため実施されませんでした。「華」は、国鉄時代から通じて首都圏地区に配置されたジョイフルトレインで、横軽対策が施されていない初の車両です。

正面窓は「宴」とは異なり、緩やかな半径の平面ガラス1枚という構造を採用しました。冷房装置は、モロ484形が床置き仕様のNAU183形、それ以外の車両は車端部屋根上にAU714形を搭載していました。

客室

客室は木目調でシンプルなデザインとし、長時間の乗車でも快適に過ごせるように掘り炬燵構造を採用。目的に応じて床をフルフラットにすることも可能にする昇降装置も内蔵されています。通路と座敷は分離されていません。通路側には窓下に上蓋式の荷物入れを設け、上蓋は腰掛けとしても利用可能でした。利用者は一度靴を脱いだら、他の車両への移動も靴を脱いだままで可能となるよう、畳の下にはスライド式下足入れが設置されていました。客室内の照明は30%の減光が可能で、各車両にはオートチェンジャー、ワイヤレスマイク、リモコン選曲式のカラオケ装置が設置されていました。

便所は1・3・6号車に設置され、真空式の洋式便所・男子小便所・洗面所が備えられていました。5号車にはテレホンカード式自動車用公衆電話が1台設置されていました。

展望室

乗務員室の直後は一段高くしたフリースペースの展望室とし、3人がけのソファーを2脚向かい合わせに設置。乗務員室との仕切りは、前面展望を確保するために大型ガラス構造とされていました。

運用

1997年4月26日に営業運転を開始し、団体専用列車を中心に運用されました。落成時から2015年3月13日までは小山電車区（現・小山車両センター）に配置されていましたが、翌14日から高崎車両センター配置に変更となりました。老朽化のため、2022年10月30日に営業運転を終了し、同年11月10日に郡山総合車両センターに廃車回送され、同年11月11日付で廃車となりました。

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