董倫

董倫（とう りん）は、生年は不詳ながら1402年に没した、元末から明初の時代を生きた儒学者であり官僚です。字は安常、号を貝州先生と称しました。本貫は恩州です。

生涯

董倫は、初め宛平県の山林の中に住居を構え、世を憂える多くの学者たちが彼の元に集いました。彼は、恩州の旧称である貝州の号で呼ばれていました。元朝末期には召し出しを受けましたが、仕官することはありませんでした。明朝が成立すると、張以寧の推薦により賛善大夫に任じられました。懿文太子朱標に近侍し、儒学を懇切丁寧に解説しました。その学識は洪武帝にも賞賛され、左春坊大学士に進みました。

1392年（洪武25年）に太子が亡くなると、董倫は河南左参議として地方に赴任しました。彼は、諸葛伯衡を推薦し、陝西参議に抜擢させました。また、儒学訓導に冠帯を与え、一般の士人と区別するよう提言しました。この提言により、儒学訓導が初めて官職として認められるようになりました。

1397年（洪武30年）、董倫は事件に連座し、雲南教官に左遷されました。雲南には初めて学校が設置され、董倫はそこで教育活動に尽力しました。

1399年（建文元年）、董倫は南京に召還され、礼部侍郎に任じられると共に、翰林院学士を兼ねました。王景と共に『太祖実録』編纂の総裁官を務めました。また、方孝孺と共に建文帝に近侍し、経学を講義しました。解縉が河州衛に流罪となった際には、董倫の進言により召還されました。

董倫は実直で温厚な人柄で、宗室諸王と協力し合うよう建文帝に勧めたものの、聞き入れられませんでした。

1402年（建文4年）、永楽帝が即位すると、董倫は80歳を超えており、まもなく官職を辞しました。南京を離れてからは、鬱々として病に倒れ、数日後に亡くなりました。

人物

董倫は、学識豊かで人格高潔な人物として知られていました。彼の儒学に対する深い造詣は、太子や皇帝にも認められ、教育者としても優れた手腕を発揮しました。また、官僚としては、実直で温厚な人柄から周囲の信頼を集めました。彼が推挙した人物が要職に就き、また儒学訓導が官職として認められるようになったことは、彼の功績を示すものです。

参考文献

『明史』巻152 列伝第40
兪汝楫『礼部志稿』巻55

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