蒲池統安

蒲池 統安（かまち むねやす）は、日本の戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。肥後菊池氏の支流である筑後蒲池氏の一族であり、その重臣として塩塚城を居城としました。

当初、統安は兄たちと同様に、当時の主君であった大友氏の当主・大友義鎮（宗麟）から一字を賜り、鎮安（しげやす）と名乗っていました。しかし、後に義鎮の子で跡を継いだ大友義統から改めて偏諱を受け、名を統安と改めたと伝えられています。

生涯

統安の武将としての最も知られた活躍は、天正6年（1578年）に勃発した耳川の戦いにおけるものです。この戦いは、薩摩の島津氏が大友氏の領国日向に侵攻したことに対し、大友氏が迎え撃った九州における一大合戦でした。

統安は、父である蒲池鑑盛（道碩）や既に蒲池氏の家督を継いでいた兄・鎮漣（しげなみ、しげゆき）と共に、大友方として参陣しました。蒲池一族は総勢3千の兵を率いていましたが、兄鎮漣は自らの直属兵2千余りを伴い、途中で本拠地の柳川へ引き上げてしまいます。しかし、統安は父鑑盛と共に、大友軍本隊に加わり戦場へ向かいました。

耳川の戦いは、島津氏が得意とした「釣り野伏せ」と呼ばれる戦術が功を奏し、大友軍が壊滅的な大敗を喫するという結果に終わります。多くの大友方武将が討ち死にする中、統安は父鑑盛と共に最後まで奮戦しました。二人は敗走する味方を尻目に、何度も島津軍の陣営、とりわけ本営への突入を試みるという、決死の突撃を敢行したと伝えられています。そして、その勇猛な戦いの末、父と共に戦場の露と消えたのです（ただし、この戦いでは一度筑後へ帰還し、後の柳川の戦いで討ち死にしたという異説も存在します）。

その壮絶な最期からか、統安は甥にあたる蒲池久鎮（宗虎丸）と共に、現在も福岡県柳川市の沖ノ端にある二宮神社に祭神として祀られています。

子孫

統安には複数の子がいました。長子の鎮貞（しげさだ）は父の跡を継ぎ、塩塚城主となりました。しかし、蒲池氏は耳川の戦いでの敗北後、さらに厳しい状況に置かれます。

天正9年（1581年）、肥前の有力大名である龍造寺隆信は、蒲池鎮漣を肥前に誘い出して謀殺するという暴挙に出ます。さらに、隆信は蒲池氏の本拠である筑後への侵攻を開始しました。この時、塩塚城を守っていたのが統安の長子・鎮貞でした。鎮貞は寡兵ながらも龍造寺軍に対して激しく抵抗しましたが、奮戦むなしく討ち死にしました。

この時、壮絶なエピソードを残したのが、伯父である鎮漣の妻・玉鶴姫です。玉鶴姫は皮肉にも龍造寺隆信の娘でしたが、夫を謀殺された父に対する深い憎悪と、蒲池家への思いから、父に反抗することを決意します。彼女は鎮貞を頼って、付き従う家臣や女性たちと共に塩塚まで落ち延びてきました。そして、鎮貞が討ち死にした後、玉鶴姫たちは塩塚の地で集団で自決を遂げたと伝えられています。この地には現在も、「史跡・蒲池鎮漣夫人他、百八人殉難之地」と刻まれた石標と地蔵が建てられており、玉鶴姫たちの強い意志とその悲劇を今に伝えています。

一方、統安の次子は、耳川の戦いで戦死した祖父・鑑盛と父・統安の菩提を弔うため、仏門に入りました。彼は応誉（おうよ）と号し、筑後国瀬高（現在の福岡県みやま市）の来迎寺で僧侶として修行を積みました。後に応誉は、柳川藩祖として知られる立花宗茂の正室である誾千代（ぎんちよ）の菩提寺となる良清寺を開いたとされています。

この次子である応誉の系統は、後に立花氏の家臣となり、その功績によって家老格という重い立場に遇されました。彼らは蒲池氏の血筋を守りつつ、柳川藩の重鎮として栄えたのです。ちなみに、現代の著名な人物である歌手の松田聖子さん（本名：蒲池法子）の生家は、この応誉の子孫にあたるとされています。

蒲池統安は、戦乱の世に武将として散りながらも、その子孫は様々な形で存続し、特に次子の系統は後の時代まで繁栄を続け、現代にまで血筋を繋いでいるのです。

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