蒲池鑑盛

蒲池鑑盛は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、筑後国南部を治めた戦国大名・蒲池氏の当主です。諱の「鑑」の字は大友義鑑から賜ったもので、法名は宗雪と称しました。彼は、史料で確認できる最古の下蒲池家の人物として知られています。

鑑盛は、「筑後筆頭大身」と称されるほどの勢力を持ち、筑後南部に1万2千町（約12万石）を領有していました。筑後十五城の筆頭大名として筑後を統括し、蒲池氏の本拠地をそれまでの蒲池城から柳川城へと移しました。柳川城は本格的に改築され、水郷の掘割が張り巡らされることで九州屈指の堅城となり、「柳川三年肥後三月肥前筑前朝飯前」と歌われるほどでした。また、風浪宮の本殿造営にも尽力し、現在の柳川市のルーツとなる城下町を形成しました。

鑑盛は、武将としての才能も高く、筑後守護大友氏の幕下として、各地を転戦しました。父・鑑久は大友氏に討たれたとされていますが、鑑盛は主君を恨むことなく、大友義鑑・義鎮（宗麟）の二代にわたって忠誠を尽くしました。また、戦場以外では、敵対関係にあった龍造寺家兼やその曾孫である隆信を匿い、手厚く保護し、復帰を支援しました。このことから、「義心は鉄のごとし」と称され、義に厚い人柄だったことが窺えます。龍造寺隆信が肥前を追われた際には、かつて家兼が住んでいた蒲池領内に住まわせ、家臣の原野恵俊に面倒を見させた上で、隆信が佐嘉に帰還する際には、蒲池氏の精兵三百で護衛し、隆信は本拠地佐嘉城の奪還に成功しました。鑑盛の二代に渡る保護がなければ、龍造寺氏は滅亡していた可能性があり、その後の龍造寺隆信の興隆もなかったと考えられます。

鑑盛は、毛利元就と大友宗麟との間の門司城を巡る戦いや、高橋鑑種の討伐戦などにも出陣しました。また、龍造寺隆信が勢力を拡大するきっかけとなった今山の戦いでは、大友宗麟の命を受けて、数十隻の兵船で筑後川を渡り、龍造寺氏の村中城を包囲、攻略しました。これらの活躍により、宗麟から幾度も感状を受けています。

天正6年（1578年）、大友氏と島津氏との間で繰り広げられた耳川の戦いに、老齢かつ病身でありながらも、嫡子の鎮漣や三男の統安と共に3千の兵を率いて参戦しました。しかし、既に大友氏から離心していた鎮漣は、病気を理由に2千の兵と共に柳川へ帰城してしまいます。鑑盛は、大友軍に残って戦い、総崩れとなる状況下、直属の兵約1千を率いて島津氏の本営への突入を試みるなど奮戦しましたが、大勢は変わらず、統安と共に戦死しました。この戦いでの最期は、「湊川の戦いにおける楠木正成の壮烈な最期にも比せられる」と評されています。

鑑盛の菩提寺である崇久寺の霊碑には、「松梅院殿長國覚久居士神儀」と刻まれています。鑑盛には、庶長子の鎮久、次子で嫡子の鎮漣、三男の統安、四男の統康（統春）がおり、その子孫は蒲池姓、首藤姓、宇都宮姓、朽網姓、江口姓、鶴姓、窪田姓など、多岐に渡って受け継がれています。三男の統安の子である応誉は、柳川市の良清寺を開き、その子孫は蒲池の名跡を再興しました。歌手の松田聖子（蒲池法子）の生家は、良清寺の蒲池家の子孫であり、松田聖子は幕末の柳川藩の蒲池鎮之の玄孫にあたります。四男の統康は、龍造寺氏の柳川攻め（柳川の戦い）で討ち死にしました。

鑑盛は、戦国時代の激動の中、武将としての才覚、義に厚い人柄で多くの人々を魅了し、その後の歴史に大きな影響を与えました。現在でも、柳川市の歴史を語る上で、欠かせない人物として、その名が語り継がれています。

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