蓬左文庫

名古屋市蓬左文庫：尾張徳川家の歴史を語る貴重な文献資料の宝庫

名古屋市東区徳川町、徳川園内にある蓬左文庫は、尾張徳川家の歴史を紐解く貴重な文献資料を収蔵する公開文庫です。その起源は、1616年（元和元年）、初代尾張藩主・徳川義直が継承した約3000冊の蔵書を基に名古屋城内に設けられた「御文庫」に遡ります。

御文庫から蓬左文庫へ

「御文庫」は、初代藩主義直の意向により、門外不出とせず、一般にも公開されていました。そのため、江戸時代から多くの人々が利用し、本居宣長が『古事記伝』執筆のために資料を閲覧したという記録も残っています。その後、歴代藩主によって蔵書は増加し、幕末期には約5万点に達したと推定されています。しかし、明治維新後の混乱期にはその約3分の1が散逸してしまいました。

1912年頃、第19代当主・徳川義親によって「蓬左文庫」と命名され、義親は蔵書の整理を行い、1931年には財団法人尾張徳川黎明会を設立、同財団に文献資料を寄付しました。これらの資料は、東京に移転、一般公開されるも、戦争により閉館、その後名古屋市に移管されました。

名古屋市への移管と発展

1950年、戦後の混乱と経済状況を背景に、蓬左文庫の名称と蔵書約6.4万点が名古屋市に譲渡されました。これにより、蓬左文庫は徳川園内に設置され、一般公開が再開されました。1978年には名古屋市博物館の分館となり、現在に至っています。2004年には展示室の拡張整備が行われ、徳川美術館と建物を連結するリニューアルオープンを果たしました。

貴重な蔵書

蓬左文庫の蔵書は約11万点。和漢の古典、古文書、古絵図、そして尾張藩や尾張徳川家に関連する資料が中心です。中には、『続日本紀』『侍中群要』『斉民要術』『河内本源氏物語』『論語集解』など、重要文化財に指定されている貴重な資料も数多く含まれています。絵図類も2000枚以上所蔵されています。これらの資料は、日本の歴史文化研究において、きわめて重要な役割を担っています。

蓬左文庫旧書庫

蓬左文庫旧書庫の建物は、2011年に名古屋市の登録地域建造物資産に登録されており、歴史的価値も高い建物です。

アクセス

蓬左文庫へのアクセスは、名鉄瀬戸線森下駅から徒歩約5分、JR中央本線・名古屋市営地下鉄名城線大曽根駅から徒歩約10～13分、または基幹バス「徳川園新出来」停留所から徒歩約5分です。

まとめ

名古屋市蓬左文庫は、単なる図書館ではありません。尾張徳川家の歴史、ひいては日本の歴史文化を理解する上で欠かせない、貴重な資料群と歴史的建造物を有する施設です。その規模と内容から、歴史研究者のみならず、広く一般の人々にとっても、大変魅力的な場所となっています。

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