藤井一興

藤井一興：国際的に活躍するピアニスト、作曲家、そして教育者

藤井一興氏は、1955年東京生まれのピアニスト、作曲家です。幼少期から才能を発揮し、安川加壽子氏をはじめ、井上二葉氏、辛島輝治氏、萩原智子氏ら著名な音楽家からピアノを学びました。作曲は長谷川良夫氏、南弘明氏に師事しました。

彼のキャリアは、東京芸術大学在学中にフランス政府給費留学生として渡仏したことから大きく転換します。パリ国立高等音楽院では、作曲科とピアノ伴奏科の両方で一等賞という輝かしい成績を収め、パリ・エコール・ノルマル音楽院ピアノ科でも高等演奏家資格を第一位で取得しました。フランスでの留学中には、オリヴィエ・メシアン、イヴォンヌ・ロリオ、マリア・クルチォ、アンリエット・ピュイグ＝ロジェといった巨匠たちから薫陶を受けました。

帰国後、藤井氏は国内外で幅広く活躍します。リサイタルや室内楽、オーケストラとの共演など、数多くの演奏活動を行い、フランス国営放送局を始めとするヨーロッパ各地の放送局、NHKなどでも多数の録音、録画を行いました。彼のリリースしたレコードやCDには、世界で2例目となるメシアンの「ニワムシクイ」のLPや、イゴール・マルケヴィッチ作品集LP、武満徹作品集CDなどがあります。また、フランス文化省からの委嘱作品も数多く、演奏会や国際フェスティバルで演奏・録音されています。さらに、世界で初めてとなるフォーレのピアノ全集の校訂を担当し、春秋社から全巻を出版するなど、音楽史への貢献もしています。

教育者としても、藤井氏は東邦音楽大学大学院大学特任教授、東邦音楽総合芸術研究所特任教授を務め、東京芸術大学、桐朋学園大学でも講師として後進の育成に当たっています。その指導は多くの若手音楽家に影響を与え続けています。

彼の演奏活動は多岐に渡り、2023年には弟子の浜匡子氏と共演するヴァイオリンリサイタルを開催するなど、後進の育成にも熱心に取り組んでいます。同年には、東彩子氏とのデュオコンサート「そして、バッハを」を開催し、J.S.バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ全6曲を演奏しました。これは、ヴァイオリンとピアノのためのデュオシリーズを40回続けた末に実現した特別な公演でした。2024年には再び浜匡子氏と共演するなど、精力的な活動を続けています。

数々の国際的な音楽コンクールでの受賞歴も彼の卓越した才能を証明しています。1976年のラ・ロシェル国際現代音楽オリヴィエ・メシアン・コンクール第2位を皮切りに、パリのブラジル・ピアノ曲コンクール第1位、クロード・カーン国際ピアノコンクール第1位、リナ・サラ・ガッロ・モンツァ国際ピアノコンクール第1位など、数々の栄冠を獲得しました。また、日本国際音楽コンクール、マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクール、サンジェルマン・アン・レイエ市現代音楽国際ピアノ・コンクールでも上位入賞を果たしています。これらの受賞歴は、彼の高い演奏技術と音楽性を裏付けるものです。

さらに、藤井氏は『クラシックミステリー 名曲探偵アマデウス』という番組にも楽曲提供などを通して関わっており、ラヴェル、ドビュッシー、フランク等の名曲をテーマにしたエピソードに音楽的な側面から貢献しています。

藤井一興氏の活躍は、演奏家、作曲家、教育者として、国内外に大きな足跡を残し、今後も音楽界をリードしていく存在として期待されています。彼の今後の活動から目が離せません。

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