藤原定長

藤原定長（ふじわら の さだなが）は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて活躍した公卿です。藤原北家勧修寺流の出身で、権右中弁・藤原光房の五男として生まれました。官位は正三位・参議にまで昇り、霊山と号しました。

経歴

定長は、諸国の国司を歴任した後、勧修寺流の子弟の例に漏れず、実務官僚として着実に実績を重ねました。その能力は後白河院に高く評価され、三事兼帯という異例の栄誉に浴しました。これは、兄である吉田経房や九条光長と並ぶものであり、三兄弟揃ってのこの功績は、古今に類例がないと賞賛されました（『山槐記』元暦元年9月18日条）。

後白河院の側近として、実質的に院伝奏の任を務め、特に文治年間には鎌倉幕府との連絡役として頻繁に活動したことが『吾妻鏡』にも記録されています。文治5年（1189年）7月には参議に任ぜられ、建久6年（1195年）1月には正三位に昇進しましたが、同年11月に47歳で亡くなりました。

文治3年（1186年）には造東大寺長官に任命され、東大寺の復興事業にも深く関わりました。また、日記として『山丞記』を後世に残しています。この日記は、当時の朝廷や社会の様子を知る上で貴重な資料となっています。

系譜

父：藤原光房（1109年 - 1154年）
母：藤原為忠の娘
妻：不詳
男子：藤原清長

定長は、その実務能力と後白河院からの信頼の厚さによって、公卿として重要な役割を果たしました。また、東大寺の復興事業への貢献や日記『山丞記』の存在は、彼の足跡を今に伝える上で重要な要素となっています。

出典

『新訂増補国史大系・尊卑分脉』吉川弘文館
『新訂増補国史大系・公卿補任』吉川弘文館
* 『鎌倉・室町人名事典』安田元久・編

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