藤原常行

藤原常行の生涯と業績

藤原常行（ふじわら の ときつら）は平安時代の初期から中期にかけて活躍した貴族であり、藤原北家に属する重要な政治家でした。彼の父は右大臣である藤原良相であり、常行はその影響を受けつつも独自のキャリアを築いていきました。

常行の官歴は、仁寿3年（853年）に蔵人として始まりました。翌年には右衛門少尉に叙任され、斉衡2年（855年）には従五位下として右衛門佐に任命されました。天安元年（857年）には周防権守に転任し、同年の天安2年（858年）に文徳天皇の死去を受けて、従兄の藤原基経と共に蔵人頭に任ぜられ、その後は基経とともに昇進を競うこととなります。

清和天皇の即位を迎えると、常行は従五位上に叙せられ、貞観2年（860年）には正五位下に昇進し、続けて従四位下、さらには右近衛権中将に任じられました。この時期、基経との競争の中で常行は著しい昇進を果たしましたが、基経の父である長良の死去以降、常行がより重視されるようになったとされています。

貞観8年（866年）には従四位上、同年3月には正四位下となり、政治の舞台での地位を固めますが、応天門の変を経た後、基経の立場がより強固になる中で、常行の進展は鈍化することとなります。基経が貞観12年（870年）に大納言に昇進した際、常行も中納言として昇進したものの、思うようには昇進できませんでした。

貞観14年（872年）には常行が大納言に任じられる一方で、基経は政治的な地位を確保し続けていました。良相の死後、常行は上位の地位を望むも実現には至らず、貞観17年（875年）に正三位に昇叙された後、同年2月に40歳で亡くなりました。彼の最終官位は大納言正三位を兼ねた行右近衛大将陸奥出羽按察使でした。

常行の逸話

彼の人生には印象深いエピソードもあります。常行が若い頃、忌夜行日に想いを寄せる女性のもとへ出かけた際、百鬼夜行に遭遇し、鬼に捕まる危険に晒されました。しかし、彼の乳母が兄弟の阿闍梨に頼んで作ってもらった尊勝陀羅尼を常行の服に忍ばせていたおかげで、鬼は彼を捕らえることができず、無事に帰宅することができたのです。この逸話は常行の運命を象徴する一つの物語として伝えられています。

常行の生涯を通して見ると、彼は藤原家の中でも特に歴史の波に翻弄されながらも、政治的な影響力を行使し続けた人物です。父から引き継いだ名声をもとに、基経との関係を築き上げながらも、自らの立場や運命を変える努力を惜しむことはありませんでした。彼の官歴や業績は、当時の貴族社会の复杂さと競争の激しさを示すものとして、今なお研究者たちに注目されています。

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