藤原成通

藤原成通（ふじわら の なりみち）

藤原成通は平安時代後期に活躍した著名な公卿であり、優れた歌人でもありました。藤原北家の中御門流に所属し、父は権大納言の藤原宗通です。成通は正二位・大納言に昇進した経験を持っており、その優れた才能が後世にわたり高く評価されています。特に、彼は蹴鞠の達人として知られ、その技術は後に「蹴聖」と称えられるほどに称賛されました。

成通の経歴

成通の家庭は栄華を誇るもので、昇進した曾祖父や祖父がいました。しかし、父は白河法皇の側近として活躍したものの、出世することはなく50歳で亡くなりました。この結果、成通の家系は次第に衰退の道を辿っていたのです。成通は8歳の時に叙爵し、10歳で鳥羽天皇に仕官し侍従に抜擢されました。白河法皇の信任を受けながらも、度々の失言が災いして出世は限られました。

天承3年には参議に任命され、続いて正二位、さらには大納言に昇ったものの、平治元年には出家を選びます。この決断は同族の昇進が続く中での皮肉なものでした。成通は出家した理由として、西住に憧れていたとも言われています。

成通は、蹴鞠に限らず、笛や和歌、今様など多くの芸能に秀でていました。しかし、彼の名は特に蹴鞠において後世まで伝えられています。その技術に関する様々な逸話が残っており、あまりにも優れたプレイにより「音ひとつしなかった」との伝説さえあるほどです。また、彼の日記『成通卿口伝日記』には、蹴鞠の技術向上のための地道な努力が記されています。

成通はまた、後[[白河天皇]]と並び称される今様の名手でもあり、彼が薬師如来に今様を奉納したことで他人の病を癒した故事も語られています。さらに、同時代の詩人である寂超や西行との親交も深く、これらの関係が彼の和歌にも影響を与えたと考えられています。成通の和歌は、『金葉和歌集』や『千載和歌集』などの勅撰[[和歌集]]に23首が採録されており、彼自身の歌集『成通集』も残されています。

蹴鞠と成通

成通の蹴鞠に対する情熱は際立っており、彼は生涯で7000日を蹴鞠の庭で過ごし、そのうち約2000日間は連続して蹴り続けたとされています。千日間休まずに蹴鞠を続ける「千日行」を達成した際には、その仲間を集めて祭りを開き、祝宴を催しました。その夜、成通が日記を書いていると、棚からひとつの毬が転がり落ちてきました。

驚いた成通が目の前に現れたのは、蹴鞠の精霊でした。彼らは千日行を祝うために現れたと語り、自らの名を告げました。彼らの存在は、蹴鞠を愛好することで国が栄え、心が軽くなること、そして功徳を積むことと深い関わりがあると教えました。

彼らは「蹴鞠の場に立つ者の心は軽やかになり、良い影響を与える」とも言い、木のない庭では好んで来ないとも警告しました。成通の形見として残るこの伝説は、彼の蹴鞠に対する情熱を象徴しています。

系譜と関連作品

成通の家族は、父が藤原宗通、母が藤原顕季の娘で、妻には藤原敦兼の娘と藤原基隆の娘がいました。また、彼には養子も二人いて、藤原泰通は実は藤原為通の子であり、藤原有通は源行宗の息子でした。

藤原成通の魅力的な人生は、澁澤龍彦の『空飛ぶ大納言』や『唐草物語』などに描かれています。

藤原成通はその人柄と優れた才能で、多くの人々から愛され続けています。特に、蹴鞠の「蹴聖」としての名は、彼を語り継ぐ重要な要素として今も人々の心に残り続けています。

もう一度検索