藤原顕季

藤原顕季：平安時代後期の歌人貴族

藤原顕季は、平安時代後期を代表する貴族であり、優れた歌人としても知られています。藤原北家魚名流の出身で、正三位・修理大夫にまで昇進しました。六条修理大夫という号で呼ばれ、歌道における六条藤家の祖、そして善勝寺流の初代として、後世に大きな影響を与えました。

白河天皇との繋がりと華麗なる経歴

顕季の母は白河天皇の乳母であったことから、幼少期から天皇の深い信頼を得ていました。この関係を背景に、讃岐国、丹波国、尾張国といった要職を歴任し、29歳という若さで正四位下に昇進するなど、順調な出世を遂げます。

その後も播磨守や大宰大弐などの要職を歴任し、莫大な富を蓄積しました。その邸宅である六条殿は、白河院の院庁となるほど壮麗を極めたと伝えられています。さらに、家格を高めるために、白河上皇の生母である藤原茂子の兄、藤原実季の養子にもなりました。

院の近臣として絶大な権勢を誇った顕季でしたが、議政官には昇進せず、正三位・修理大夫が最終官位となりました。参議への昇進を希望したものの、漢詩が作れないことを理由に断念したという逸話も残されています。

歌人としての活躍と顕著な業績

顕季は歌人としても非常に優れた才能を発揮しました。藤原忠通主催の歌合で判者を務めるなど、当時の歌壇を代表する歌人の一人として活躍しました。自らも歌合を主催するなど、精力的に活動し、『承暦二年内裏歌合』、『堀河百首』、『郁芳門院根合』など数々の歌合に出詠し、高い評価を得ました。

特に、柿本人麻呂の肖像に歌を献じたという記録は、史上初の「人麿影供」として注目に値します。その作品は『後拾遺和歌集』をはじめとする勅撰和歌集に48首も採録され、中でも『金葉和歌集』には20首もの歌が収められ、巻頭に顕季の作品が置かれるという栄誉に浴しました。顕季自身の歌集『六条修理大夫集』も残されています。

栄華を極めた一族と子孫

顕季の三人の息子、藤原長実、藤原家保、藤原顕輔とその子孫たちも、院の近臣として活躍し、顕季を祖とする家系は「善勝寺流」と呼ばれ、四条家を含む7つの堂上家を輩出しました。その繁栄ぶりは、顕季の地位と影響力の大きさを示すものです。

代表的な歌

顕季の代表的な歌には以下のようなものがあります。

鴫のふすかり田にたてる稲茎の否とは人のいはずもあらなん（後拾遺和歌集）
み山いでてまだ里なれぬ時鳥うはの空なる音をやなくらん（金葉和歌集）
夏衣すそのの草葉ふく風におもひもあへず鹿やなくらん（金葉和歌集）
わが恋は烏羽にかく言の葉のうつさぬほどはしる人もなし（金葉和歌集）
* わぎもこが声たちききし唐衣その夜の露に袖はぬれにき（金葉和歌集）

これらの歌は、自然の情景や人間の感情を繊細に表現しており、顕季の優れた才能を如実に示しています。

まとめ

藤原顕季は、白河天皇との深い繋がりを背景に、政治と歌壇の両方で活躍した重要な人物でした。その権勢と才能、そして栄華を極めた一族は、平安時代後期の歴史において重要な位置を占めています。彼の残した歌は、現代においても人々の心を捉え続けています。

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