藤原松影

藤原松影（ふじわら の まつかげ）は、平安時代初期に活躍した貴族です。藤原北家魚名流の出身で、父は刑部少輔の藤原星雄です。官位は従五位下、最終的には山城守を務めました。

若き日の活躍と式部省での頭角

松影は、若い頃に内舎人としてキャリアをスタートさせました。その後、淳和天皇の時代には、天長4年（827年）に式部大丞に任ぜられます。当時、春宮（後の仁明天皇）に仕える官僚は名門から選ばれるのが通例でしたが、松影の評判は非常に高く、春宮少進に抜擢されました。一度式部大丞に戻りますが、朝廷の会合で、嵯峨上皇の皇子である源常が淳和天皇の勅許を得て帯剣しようとした際、松影はそれを認めませんでした。この行為が淳和天皇の怒りを買い、松影は弾正少忠に左遷されることになりました。

この事件の背景には、当時の式部省が人事や儀礼を司る官庁として、太政官の命令にも異議を唱える存在になっていたという事情があります。松影の行動は、天皇の勅といえども、職権を盾に拒否するほど、当時の式部省が権威を持っていたことを示唆しています。

仁明天皇の時代

仁明天皇の時代になると、松影は承和元年（834年）に遣唐判官兼山城権介に任じられます。しかし、老母の存在を理由に固辞し、最終的に辞官が認められました。その後、丹波介を経て、二度式部大丞を務めます。承和11年（844年）には従五位下に叙爵しました。その後も、式部少輔、左少弁、治部少輔といった要職を歴任し、嘉祥3年（850年）の仁明天皇崩御の際には、御前次第司次官を務めています。文徳天皇の時代になると、嘉祥4年（851年）には山城守として地方官に転任しました。

最期と人物像

斉衡2年（855年）1月22日、病のため57歳で亡くなりました。最終官位は前山城守従五位下でした。

松影は、その厳格な性格と公正な態度で知られていました。鬚や眉がまるで描いたように立派だったと伝えられています。式部大丞を都合4度も務めたことから、故事に非常に精通しており、その進退や容儀は天性のものであったと評されています。式部省の官僚の模範とされた人物でした。

官歴

以下に、松影の官歴をまとめます（『六国史』による）。

時期不詳：内舎人
天長4年（827年）：式部大丞
時期不詳：春宮少進、式部大丞、弾正少忠
承和元年（834年）1月19日：遣唐判官、山城権介
承和3年（836年）：式部大丞
時期不詳：正六位上、丹波介、式部大丞
承和11年（844年）1月7日：従五位下
承和12年（845年）2月27日：式部少輔
承和13年（846年）9月14日：左少弁
時期不詳：中務少輔
嘉祥2年（849年）1月13日：石見守、2月27日：治部少輔
嘉祥4年（851年）1月11日：山城守
斉衡2年（855年）1月22日：卒去（前山城守従五位下）

系譜

以下は、『尊卑分脈』に基づく松影の系譜です。

父：藤原星雄
母：不詳
生母不詳の子女
男子：藤原越
男子：藤原貞
男子：藤原道
男子：藤原長
男子：藤原会
男子：藤原淵
男子：尋真

脚注

森田悌『続日本後紀 （下）』講談社学術文庫、2010年
* 『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年

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