吉川逸治

吉川逸治について

吉川逸治（よしかわ いつじ）は、1908年に神奈川県横浜市で生まれ、2002年12月に亡くなった日本の美術史学者です。彼は特に西洋美術史を専門とし、東京大学の名誉教授として知られています。従兄には中国文学の研究者である吉川幸次郎がいます。

学歴とキャリアの初期

吉川は旧制神奈川県立横浜第一中学校、旧制浦和高等学校を経て、東京帝国大学文学部美学美術史学科を卒業しました。彼の学問の道は、矢代幸雄の指導の下で始まりました。1933年から1939年までフランスに留学し、そこでアンリ・フォシヨンから美術の教授を受けました。この留学期間中、彼は「サン・サヴァン教会堂のヨハネ黙示録画の研究」に取り組み、パリ大学から博士号を取得しました。彼の研究分野はロマネスク建築と壁画が中心です。

教職と業績

帰国後、吉川は1947年に東京芸術大学の教授に就任し、1953年に東京大学文学部の助教授に、1955年には教授に昇進しました。1969年には定年を迎え、その後は大和文華館の館長を務めました。さらに名古屋大学と東海大学でも教授を務め、学界への貢献を続けました。彼は1974年に紫綬褒章、1980年には叙勲三等授旭日中綬章を受章し、1982年には日本学士院会員に選ばれました。吉川はその後、叙正四位および叙勲二等授瑞宝章を追贈されました。

人脈と交流

美術史の仲間や友人には、秋山光和や柳宗玄などがいます。また、高階秀爾、田中英道、辻佐保子、若桑みどりといった弟子たちも彼の指導を受けました。吉川はまた、大岡昇平や中村光夫、福田恆存といった著名な文学者たちと「鉢の木会」に参加し、季刊同人誌『聲』の編集にも関わりました。この同人誌は丸善から10号が発行されています。

著書と翻訳

吉川逸治の著書には、1939年に出版された「L'Apocalypse de Saint-Savin」や、1948年の「西洋美術史 第3巻 中世の美術」、1964年の「近代美術への天才たち」、1979年の「ロマネスク美術を索めて」、1980年に再版された「日本美術入門」、1982年の「サン・サヴァン教会堂のロマネスク壁画」などがあります。さらに、彼は多くの翻訳や共訳に携わり、ウジェーヌ・ダビの『グレコとベラスケス』やオザンファン／ル・コルビュジエの『新しき藝術』、ミッシェル・ラゴンの『抽象芸術の冒険』などがその例です。

吉川逸治の業績は、日本の美術史学界において非常に重要なものであり、彼の研究や教育によって多くの人々が美術に目を向けるきっかけとなりました。

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