藤里駒ヶ岳

藤里駒ヶ岳（ふじさとこまがたけ）

藤里駒ヶ岳は、秋田県山本郡藤里町に位置する標高1,158mの山です。地元では太良駒ヶ岳とも呼ばれ、古くは江戸時代の絵図にもその名が記されています。白神山地の南東部に位置しますが、世界遺産地域には含まれていません。

概要

山頂からは、岩木山や白神岳をはじめ、気象条件が良ければ岩手山、鳥海山、男鹿半島、さらには北海道まで見渡せる大パノラマが広がります。火山活動によって形成された山であり、麓には火山灰が堆積していますが、歴史的な噴火記録は残っていません。

駒ヶ岳の名前の由来は、残雪期に見られる馬の形をした雪形です。この雪形が現れる時期が田植えの時期と重なるため、かつての農民たちは駒ヶ岳の雪形を目安に田植えの準備を始めたと言われています。年によって雪形の見え方が異なり、二頭の馬に見える年や、はっきりとした形にならない年もあります。

明治時代には、この山の写真を撮ろうとした二人の若者が遭難し、一人が亡くなるという悲しい出来事がありました。その場所には遭難碑が建てられ、その後、「写真を撮ると神様が怒る」という迷信が生まれたそうです。しかし、現在では多くの登山者によって美しい写真が撮影されています。

1970年代には、駒ヶ岳周辺の森林伐採が進みましたが、写真店経営者の鎌田孝一氏が少年たちと登山した際、少年の一言がきっかけで自然保護活動を志しました。この活動が、自然破壊の象徴であった青秋林道の建設を中止させ、白神山地の世界遺産登録へと繋がりました。現在では、伐採跡地にも木々が育ち、徐々に自然が回復しています。

駒ヶ岳周辺は古くから人々の生活と密接に関わってきたため、原生林はほとんど残っていません。白神山地の世界遺産登録時にも、周辺の伐採跡が問題となり、世界遺産の範囲には含まれませんでした。

アクセス・登山

秋田自動車道二ツ井白神ICから約60分で、藤里駒ヶ岳北側の黒石沢登山口に到着します。登山口には案内板とトイレが設置されています。山頂までは徒歩約110分です。黒石登山口からは、田苗代湿原を通るルートと迂回ルートの2種類があります。田苗代湿原ルートは比較的急な登りとなっています。

素波里ダム方面からは、藤里駒ヶ岳南側の樺岱登山口からのルートがあります。樺岱登山口には数台分の駐車スペースがあり、そこから林道を少し戻った場所が登山口です。つづら折りの道を登っていくと、ブナ平と呼ばれる巨木ブナ林に到着します。さらに、樺岱のピークを過ぎ、前岳の西斜面を通り、痩せ尾根と鎖場を越えると山頂に到着します。

周辺の景観地

田苗代湿原：黒石沢登山道駐車場から徒歩15分ほどの場所にある高層湿原。春にはミズバショウやリュウキンカ、夏にはニッコウキスゲやキンコウカ、秋には紅葉が楽しめます。
太良峡谷（藤里峡）：太良鉱山跡から上流にある峡谷。整備された道があり、奇岩や巨石の間を流れる渓流や滝を見ることができます。
岳岱自然観察教育林：自然観察林として整備されたブナの巨木林。樹齢400年を超えるブナの木を見ることができます。入り口にはトイレも完備されています。
猿ヶ瀬園地：素波里ダム湖の中央部に位置する県立公園。キャンプ場や売店、遊具などがあり、駒ヶ岳登山の拠点としても利用されています。

近隣の山

冷水岳
小岳

参考文献

『新・分県登山ガイド［改訂版］4 秋田県の山』山と渓谷社、2009年12月16日。ISBN 978-4635023542。

関連項目

駒ヶ岳 - 同名の山々。（曖昧さ回避）

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