蘭妃 (後燕)

蘭氏（らんし、生没年不詳）は、五胡十六国時代の後燕の君主、昭武帝慕容盛の妻です。彼女は、一時的に後燕の簒奪者となった蘭汗の娘であり、母親は正妻の乙氏です。また、前燕の文明帝慕容皝の側室であった淑儀蘭氏（文昭皇后）の姪にあたります。

激動の時代を生きた女性

永康3年（398年）、蘭氏の父である蘭汗は、後燕の恵愍帝慕容宝とその太子慕容策を殺害し、自ら昌黎王を称して即位しました。この知らせを聞いた慕容盛は、龍城で行われる葬儀に駆けつけ、悲しみに暮れました。部下の張真が制止しようとしましたが、慕容盛は「今は逃れることはできない。蘭汗は浅はかであり、婚姻関係を無視することはできないだろう。数ヶ月のうちに、復讐の機会が必ず訪れる」と告げました。

蘭汗の息子たちは、慕容盛の殺害を企てましたが、蘭氏は母と共に号泣し、夫のために父に命乞いをしました。また、兄弟たちの前に土下座して懇願しました。蘭汗は娘を哀れに思い、息子を遣わして慕容盛を迎え入れ、婿として変わらず遇し、侍中・左光禄大夫の地位を与えました。

同年7月、慕容盛はついに父の仇を討つべく、蘭汗父子を殺害し、自ら即位しました。蘭氏も連座するところでしたが、慕容盛の母である丁氏（献幽皇后）が、蘭氏の功績に免じて命乞いをしたため、赦免されました。しかし、彼女は皇后となることはできませんでした。

蘭氏は、激動の時代において、愛する夫と家族の間で板挟みになりながらも、必死に生き抜いた女性でした。彼女の行動は、一族を守ろうとする強い意志の表れであり、後世に語り継がれるべき物語です。

参考文献
『十六国春秋』
『資治通鑑』

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