蘭州級駆逐艦

蘭州級駆逐艦：中国海軍の防空盾

蘭州級駆逐艦は、中国人民解放軍海軍が運用するミサイル駆逐艦です。052C型駆逐艦、あるいはNATOコードネームで旅洋II型とも呼ばれます。本級は、先行する052B型駆逐艦をベースに、国産のHHQ-9艦隊防空ミサイルシステムを搭載した点が最大の特徴です。艦橋構造物に配置された4面のアクティブ・フェーズド・アレイ（AESA）レーダーアンテナから、「中華イージス」という通称で呼ばれることもあります。

誕生の背景：台湾海峡危機と技術革新

1995年の第三次台湾海峡危機において、アメリカ海軍の圧倒的な軍事力を見せつけられた中国は、自国海軍の近代化を急務としました。その結果、ロシア製のソヴレメンヌイ級駆逐艦を導入するとともに、高い対空能力を持つ国産ミサイル駆逐艦の開発計画が本格化します。

052B型駆逐艦の建造と並行して、アメリカ海軍のアーレイ・バーク級を参考に、イージスシステムに匹敵する国産艦の開発が始まりました。これは、国家を挙げての情報収集と技術開発を伴う一大プロジェクトでした。その成果として生まれたのが、蘭州級駆逐艦です。

2002年から建造が開始され、2004年から2005年にかけて最初の2隻が就役。その後、性能試験に基づいた改良を継続的に行い、2009年からさらに4隻が建造されました。2011年には、蘭州級をさらに発展させた052D型駆逐艦（昆明級）の建造が始まり、蘭州級の建造は終了しました。

設計：052B型の系譜と進化

蘭州級の船体と主機関は、052B型を基本としています。中央船楼型船体で、艦首にはブルワーク（波除け）が設けられています。052B型と比べて、VLS（垂直発射システム）の保護のため、ブルワークが延長されているのが特徴です。

艦橋構造物は、AESAアンテナの搭載に伴い、052B型よりも1層高くなっています。アンテナ配置の関係で艦橋側面の窓が少なく、代わりに潜望鏡が設置されています。機関は、MTU製ディーゼルエンジンとウクライナ製のガスタービンエンジンを組み合わせたCODOG方式とされています。

装備：アーレイ・バーク級を意識した戦闘システム

蘭州級の戦闘システムは、アーレイ・バーク級を参考に開発されました。ただし、主任設計師自身もアメリカ艦より劣る点があると認めています。

C4ISR（指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・偵察）システムは、海軍全体のセンサ情報をネットワークで共有し、艦隊全体で脅威に対応する「海軍装備綜合集成」計画に基づいて開発されました。初期建造艦にはH/ZKB、後期建造艦にはH/ZBJ-1戦術情報処理装置が搭載されました。

レーダーは、艦橋に配置された4面固定式のAESAレーダーが中心です。NATOコードネームは「ドラゴンアイ」と呼ばれます。低空警戒用の364型レーダー、長距離捜索用の517H-1型レーダーも搭載しています。ソナーは、フランス製のDUBV-23を参考に開発されたSJD-8/9を使用しています。

武器システムでは、HHQ-9A艦隊防空ミサイルが最大の武器です。6セルVLSを8基搭載し、コールドローンチ方式を採用しています。艦対艦ミサイルはYJ-62を使用し、主砲は55口径100mm単装速射砲、CIWSには730型30mmガトリング砲を搭載しています。対潜兵器として魚雷発射管やデコイ発射機を備えています。

艦載機として、後部甲板には中型ヘリコプター（Ka-28またはZ-9C）用の格納庫とヘリコプター甲板があります。

運用史と国際情勢

蘭州級は、中国海軍の活動を活発化させる上で重要な役割を果たしています。日本近海での活動も確認されており、アメリカ海軍との間では南シナ海での接近遭遇事件も発生しています。これらの事実は、中国海軍の海洋進出と、その周辺国との緊張関係を示しています。

登場作品

蘭州級は、いくつかのフィクション作品にも登場しています。漫画『空母いぶき』や小説『天空の富嶽』などでは、中国海軍の戦力として描かれています。これらの作品は、蘭州級の性能や役割、そして中国海軍の現状について、大衆に理解を深める上で役立っています。

まとめ

蘭州級駆逐艦は、中国海軍の近代化を象徴する存在であり、その高い対空能力は、中国の海洋進出における重要な戦力となっています。設計から装備、運用史まで、様々な側面から見ていくことで、中国海軍の現状と今後の動向を理解する上で重要な手がかりとなります。

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