虞謙

虞謙（ぐ けん）は、明代初期に活躍した官僚であり、その字（あざな）は伯益（はくえき）と称しました。1366年に鎮江府金壇県で生まれ、1427年に62歳でこの世を去りました。

初期の官僚生活

虞謙は、虞徳華と周氏の間に生まれました。1395年に国子生から刑部山東司郎中に抜擢され、その後の官僚としてのキャリアをスタートさせました。その後、杭州府知府として地方行政に携わり、その手腕を発揮しました。

建文帝時代

建文帝の時代、虞謙は仏僧や道士が所有する田地の制限を提言しました。彼は、10畝を超える土地を貧民に分配することを求め、この提案は受け入れられました。しかし、建文帝が永楽帝に代わると、この政策は撤回されました。

永楽帝時代

永楽帝の治世下では、虞謙は大理寺左少卿として中央政府で活躍しました。彼は、都察院が誤って死罪を適用しようとした事件において、刑罰の過酷さを批判し、より適切な刑罰を適用するように進言しました。また、天津衛の倉で発生した火災事件では、横領を隠蔽するための放火の疑いがあるとして、多数の官僚が逮捕されましたが、虞謙は刑罰の濫用を諫め、多くの者の刑を軽減させました。

1409年には右副都御史に昇進し、永楽帝の北巡の際には、皇太子朱高熾の補佐役として重要な役割を果たしました。1410年には、給事中の杜欽とともに淮安府や鳳陽府などの災害地域を巡視し、田租の免除や人身売買された子女の買い戻しに尽力しました。また、食糧輸送の際には、不公平な労役の負担を是正するために、輸送距離に応じた労役の分担を提案しました。これにより、富裕層が近距離の輸送を独占し、貧困層が遠距離の輸送を強いられるという不公平が改善されました。さらに、木材の運送を監督した際には、疫病の流行に対して適切な対策を講じ、被害を最小限に抑えました。1421年には、浙江の巡撫として地方行政を監督しました。

洪熙帝・宣徳帝時代

1424年に洪熙帝が即位すると、虞謙は中央に召還され、大理寺卿に任命されました。彼は、呂升や仰瞻といった同僚とともに、司法の公平性を追求しました。虞謙は、当時の急務について七項目を上奏しましたが、その内容を秘密にせず、広く意見を求めました。しかし、この行動が洪熙帝の怒りを買い、一時的に降格されました。その後、楊士奇のとりなしにより、大理寺卿に復帰しました。宣徳帝の時代には、死刑囚の刑期について、罪の軽重に応じた刑期を設けることを提案し、許可されました。

死去

虞謙は、1427年に官職在任中に62歳で亡くなりました。彼の死は、多くの官僚や民衆に惜しまれました。

人物評価

虞謙は、清廉潔白で公正な官僚として知られており、その政策は民衆の利益を最優先に考えたものでした。彼は、官僚の不正を厳しく批判し、刑罰の濫用を諫めるなど、その信念を貫きました。彼の貢献は、明代の司法制度の改善に大きく貢献しました。

家族

虞謙には、虞禎、虞祥、虞禋という三人の息子がいました。

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