行縢山

行縢山（むかばきやま）

行縢山は、九州南部に広がる九州山地の東端に位置する山で、宮崎県延岡市にあります。この山は、西側の雄岳（標高約831メートル）と東側の雌岳（標高約809メートル）の二つの山頂から成り立っており、山頂付近は断崖絶壁となっています。

地形と地質

行縢山の東側には、行縢川が流れ、美しい景観を作り出しています。この山は、約1400万年前のカルデラ噴火によって形成されたと考えられています。当時、行縢山の北方に位置する大崩山の原型となるカルデラが大規模な噴火を起こし、その外縁部に当たる四万十層群にマグマが貫入しました。このマグマが冷え固まって花崗岩の環状岩脈となり、その後の浸食によって現在の行縢山が形成されました。行縢山は、この環状岩脈の南端部に位置しています。

自然環境

行縢山は、国有林の行縢山風景林として保護されており、その大部分が祖母傾国定公園の第1種特別地域および保健保安林に指定されています。豊かな自然が残されており、多様な動植物が生息しています。

行縢の滝と修験道

行縢山は、古くから修験道の霊山として信仰を集めており、雄岳と雌岳の間には、日本の滝百選にも選ばれている「行縢の滝」があります。この滝は、修行の場としても利用されてきました。また、行縢山は、近くの比叡山などとともに、ロッククライミングのゲレンデとしても知られ、多くのクライマーが訪れます。

登山コース

行縢山のふもとには、宮崎県が管理するロッジがあり、県内の小学校の林間学校の登山コースとしてよく利用されています。標準的な登山コースの所要時間は約2時間程度です。しかし、二つ目の橋を渡った後のほこら前までと、八合目から山頂までは勾配が急なため、長距離登山のトレーニングとしても活用されています。登山道は整備されていますが、一部急な箇所もあるため、注意が必要です。

歴史と文化

行縢山の名前は、狩猟の際に下半身に着用する「行縢（むかばき）」に似ていることに由来します。山の南側山麓には、718年（養老2年）に創建されたとされる行縢神社があり、地元の人々から信仰を集めています。この神社は、行縢山が修験道の霊場として栄えた歴史を今に伝えています。

アクセス

行縢山へは、延岡市内から車でアクセスできます。最寄りのバス停からは、徒歩でのアクセスも可能です。登山コースの入り口には駐車場やロッジなどの施設が整備されており、登山者にとって利用しやすい環境が整っています。

まとめ

行縢山は、美しい自然と歴史が調和した魅力的な山です。登山やロッククライミング、滝見など、様々な楽しみ方ができ、多くの人々を魅了しています。また、修験道の霊場としての歴史や文化も深く、訪れる人々に感動を与えます。

参考文献

* 天本孝志　『九州の山と伝説　総集篇』　葦書房、1983年

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