裴世清

裴世清（はい せいせい）

裴世清は、6世紀後半から7世紀前半にかけて、中国の隋・唐時代に活躍した官僚です。出自は、唐代に多くの宰相を輩出した名門、河東郡裴氏の一族です。彼の父は裴著といい、息子には斉州司馬となった裴嘉陵がいます。

隋の使者として倭国へ

裴世清が歴史に名を残したのは、隋の煬帝の命を受け、倭国（当時の日本）への使者として派遣されたことによります。これは、倭国王が隋に対して対等な立場を主張した国書を送ったことに対する、煬帝の返礼という形で行われました。『隋書』によると、裴世清は文林郎という官位を持ち、608年に使者として倭国へ向かいました。

この時、裴世清は対馬を経由し、筑紫（現在の福岡県）に到着。そこから東へ進み、秦王国（辰王国？）という場所にも立ち寄ったとされています。この秦王国の人々は、中国人と同じ容貌をしており、夷州と呼ばれる地域とは異なるという記述が残っています。

筑紫から東は全て倭であるとされ、倭王は使者として阿倍鳥らを派遣し、裴世清を迎えました。その後、倭王自身も出迎え、歓待したと伝えられています。裴世清は、倭王に対し隋の皇帝の言葉を伝え、その使命を果たしました。

『三国史記』における記述

朝鮮半島の歴史書である『三国史記』には、裴世清が倭国へ向かう際に、百済の南部を経由したという記述があります。このことは、当時の東アジアにおける外交ルートや各国の関係性を知る上で、重要な手がかりとなります。

『日本書紀』における記述

日本の歴史書である『日本書紀』には、裴世清の来日がより詳細に記されています。彼は12人の従者と共に、小野妹子とともに筑紫に到着。難波吉士雄成に招かれ、難波高麗館に滞在しました。

その後、裴世清は歓迎を受けながら京へと入り、朝廷にて隋の皇帝の書状を読み上げました。この際、『日本書紀』では裴世清を「鴻臚寺の掌客」と記し、倭の天皇に対して「皇帝問倭皇」という書状を携えてきたと伝えています。これは、倭が自らを「天子」と称していたことを踏まえ、隋側が倭を冊封関係に取り込みつつも、一定の敬意を払ったことを示唆しています。しかし、この『日本書紀』の記述には、改竄の可能性も指摘されています。

裴世清はその後、難波大郡に滞在し、帰国の途につきました。

その他の記録

『元興寺伽藍縁起幷流記資財帳』にも、裴世清の来朝に関する記述があり、彼が鴻臚寺の役人であったことや、他の使節団のメンバーについても言及されています。

まとめ

裴世清は、隋と倭の外交関係において重要な役割を果たした人物です。彼の来日は、当時の東アジアにおける国際関係、そして日本という国がどのように認識されていたかを理解する上で、貴重な史料となっています。彼の足跡は、様々な歴史書に記録されており、歴史研究において、多くの議論を呼んでいます。これらの記録を比較・検討することで、より多角的に当時の状況を捉えることができるでしょう。

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