裴仁基

裴仁基の生涯と軍功

裴仁基（はい じんき、生年不詳 - 619年）は、隋時代の中国において名を馳せた軍人である。彼は河東郡の聞喜県に由来し、字は徳本であった。父の裴定から受け継いだ武士の家系を背景に、仁基は数々の戦闘で功績を積み重ね、歴史に名を刻んだ。その背景には、仁基の子である裴行儼や裴行倹といった後世の戦士たちが存在する。

軍人としてのキャリアの幕開け

大業元年（581年）、仁基は隋の軍に参加し、親衛軍としての地位を得た。開皇9年（589年）には、南朝陳との戦争で顕著な戦功を挙げ、儀同の位を授けられた。その後、漢王楊諒の王府に仕官し、彼の信任を受けた。しかし、仁基はその後の楊諒の反乱計画を諌めることで、彼の怒りを買ってしまう。結果的に、仁基は捕らえられ獄に投じられるが、煬帝の即位後に彼の軍事的才能が高く評価され、護軍の職に任命された。

軍事家としての実績

仁基は、大業年間に武賁郎将に任じられ、さまざまな戦闘に従事することになる。特に、向思多による反乱を討つために李景の指揮のもとに参加し、その戦績をもって銀青光禄大夫に昇進した。また、吐谷渾を張掖で撃破したことで金紫光禄大夫の位を受け、靺鞨の侵入を撃退したことでも左光禄大夫となった。さらに、煬帝による高句麗遠征にも参加し、光禄大夫の地位を得た。

キーパーソンとしての運命の転機

しかし、仁基の運命は大業12年（616年）に急展開を見せる。張須陀が李密との戦いで戦死した後、仁基は河南道討捕大使に任じられ、虎牢の拠点から李密の勢力拡大を抑える役割を果たす。しかし、彼の功績は評価されず、監軍御史の蕭懐静による讒言の影響を受けることとなった。大業13年（617年）、仁基はやむを得ず蕭懐静を殺し、李密に帰順する。

封建と忠誠

李密の勢力下で、彼は河東郡公に任じられ、息子の裴行儼も絳郡公に封じられる。皇泰元年（618年）には、王世充が李密との全面戦争を開始する中、仁基は戦略を提案したが、他の諸将は王世充を軽視し、彼の意見は無視された。忖度されることなく、李密は戦争に臨むが、その結果として敗北し、仁基は王世充に捕らえられる。

最期の時

王世充は仁基親子を厚遇しつつも、彼らの人気に嫉妬を抱くようになる。翌年の4月、王世充が皇帝を名乗るや、仁基は礼部尚書に昇進し、裴行儼は左輔大将軍に任じられた。官職の上昇の背後には緊迫した後宮での陰謀が潜んでいた。仁基は将来に対する不安から、数名の将軍たちと共に反乱を計画するも、密告によって陰謀が発覚し、仁基とその息子は王世充に命を奪われることとなる。彼の死は、時代の激動を象徴する一つの悲劇的な終焉として記憶される。

伝記資料

裴仁基に関する詳細は『隋書』巻70 列伝第35および『北史』巻38 列伝第26に記されている。

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