西園寺公顕

西園寺公顕（さいおんじ きんあき）

西園寺公顕は、鎌倉時代後期の公卿で、今出川右府と号しました。父は西園寺実兼、母は花山院師継の娘で、兄に西園寺公衡、弟に今出川兼季がいます。娘の西園寺婉子は二条道平の正室となりました。

生涯

正応元年（1288年）に叙爵し、以降、順調に昇進を重ね、正応3年（1290年）には参議として公卿に列しました。正応5年（1292年）には伏見天皇の中宮である西園寺鏱子の中宮権大夫に任じられ、永仁6年（1298年）の天皇譲位まで務めました。その後、権大納言に転じ、徳治2年（1307年）には皇太子・富仁親王（のちの花園天皇）の春宮権大夫となりますが、翌年の即位により辞職しています。延慶3年（1310年）には右近衛大将に任じられ、応長元年（1311年）には右馬寮御監となりましたが、正和元年（1312年）に辞任しました。正和4年（1315年）には従一位に叙され、同年9月には兄・公衡が父に先立って亡くなったため、西園寺家の嫡流となります。正和5年（1316年）には内大臣、さらに文保元年（1317年）には右大臣に任じられましたが、すぐに辞職しました。

当時の公顕には3歳の男子（のちの実顕）がいましたが、後継者が定まっていませんでした。また、弟の兼季にも子がなかったため、父の実兼は家督相続について、「兼季を公顕の嫡子とし、実顕を兼季とする」ことを定めました。しかし、弟の兼季に嫡子・実尹が生まれた一方、公顕の子の実顕は早世し、孫の公冬は南朝に仕えたため、今出河（今出川）家は弟兼季の子孫に引き継がれることになりました。元応3年（1321年）2月8日、48歳で薨去しました。

文化人としての側面

公顕は京極派の歌人としても知られ、『新後撰和歌集』以下の勅撰和歌集に計24首が採録されています。しかし、政治的な才能には乏しかったとされており、『花園天皇宸記』には、公顕が県召除目の大間書執筆を担当した際に、その作法が分からず、娘婿の二条道平が天皇の前で教えている様子に、花園天皇が憤慨したことが記されています。

西園寺家は、琵琶秘曲伝授の師をしばしば務めており、公顕もその一員でした。延慶2年（1309年）には後伏見院に楊真操の秘曲を伝授しており、このことが従一位に叙せられた理由の一つと推察されています。また、正和2年（1313年）にも後伏見院に秘曲を伝授しています。西園寺家が琵琶の秘曲伝授に深く関わっていたことは、当時の文化を考える上で重要な要素と言えるでしょう。

系譜

父：西園寺実兼
母：花山院師継の娘
妻：菅原在綱の娘
男子：今出川実顕（1315?-1333）
男子：良寿
女子：西園寺婉子（蔭子） - 二条道平室
女子：一条内経室
女子：今出川兼季室、実尹母
女子：後京極院御匣殿（?-1331以前） - 尊良親王妻（側室？）
女子：宣政門院女房

参考文献

近藤敏喬 編『宮廷公家系図集覧』、東京堂出版、1994年
橋本政宣 編『公家事典』、吉川弘文館、2010年
『圖書寮叢刊 伏見宮楽書集成一』、宮内庁書陵部編、明治書院
岩佐美代子著、校注『文机談』、笠間書院

関連項目

* 西園寺家

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