西園寺致季

西園寺致季(さいおんじむねすえ)は、江戸時代中期を代表する公卿の一人です。中宮権大夫・西園寺実輔を父に持ち、幼名は千撻丸と名付けられました。その華麗なる経歴は、従一位・左大臣にまで上り詰める輝かしいものでした。

致季のキャリアは貞享2年(1685年)の叙爵を皮切りに始まります。清華家としてめきめきと頭角を現し、侍従、左近衛少将、左近衛中将といった要職を歴任しました。元禄9年(1696年)には従三位に叙せられ、公卿の仲間入りを果たします。その後も昇進は続き、権中納言、権大納言を歴任。宝永年間(1704-1711)と正徳年間(1711-1716)には、神宮伝奏を二度務めるなど、朝廷における重要な役割を担いました。この間、踏歌節会外弁も務め、朝廷の儀式や祭祀にも深く関わっていたことがわかります。

享保年間(1716-1736)に入ると、致季の地位はさらに上昇します。享保9年(1724年)には右近衛大将に、享保13年(1728年)には内大臣に任ぜられました。翌年には従一位を授与され、朝廷における最高位の栄誉に浴します。元文3年(1738年)には右大臣、そして延享2年(1745年)には左大臣にまで上り詰めました。しかし同年、致季は左大臣を辞職します。

致季の晩年は、太政大臣への昇進を巡る出来事が大きな影を落とします。宝暦6年(1756年)、致季の病が重くなると、息子の西園寺公晃は、従弟にあたる関白一条道香に太政大臣への昇進を嘆願しました。清華家にとって太政大臣の位は最高の栄誉であり、致季の功績を考えれば当然の願いとも思えます。しかし、道香は武家伝奏の柳原光綱と広橋兼胤を呼び寄せ、この嘆願について慎重な姿勢を示しました。『広橋兼胤公武御用日記』には、道香が「摂家ですら容易に任じられないのに、清華家が願うこと自体、すべきではない」と述べ、桃園天皇にもその旨を報告したことが記録されています。結局、致季の太政大臣昇進の願いは叶うことなく、彼は生涯を終えました。

致季の家族についても見てみましょう。父は西園寺実輔、母は家女房です。妻も家女房と伝わっています。子息には西園寺公晃、飛鳥井雅香、小倉宣季、今出川誠季、橋本実理、大宮貞季らがおり、いずれも朝廷や社会で重要な役割を担った人物やその家系につながる人物が名を連ねています。西園寺致季の生涯は、華麗な昇進と、叶わなかった願いという対照的な側面を持つ、江戸時代中期の公卿像を私たちに示しています。彼の功績は、朝廷の記録や関係者の日記などに散りばめられ、後世へと伝えられています。

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