踏歌節会

踏歌節会（とうかのせちえ）

踏歌節会は、宮中で天皇が踏歌を鑑賞する正月の年中行事であり、「踏歌の豊明」とも呼ばれました。五位以上の者を招いて宴が開かれ、男踏歌と女踏歌に分かれて行われました。節会で行われたのは女踏歌であり、中世以降も形式化しつつ続いたのは、節会の式次第上必須であったためです。

概要

元々は唐の風習である上元節（1月15夜）に由来し、日本でも1月中旬頃に行われていました。日本での踏歌の初見は『日本書紀』の持統天皇7年（693年）正月の記事です。『続日本紀』によると、742年（天平14年）には少年少女が踏歌を行っており、この頃には広まっていたと考えられます。

光孝天皇の時代までは毎年1月16日に女踏歌が行われていましたが、889年（寛平元年）に男踏歌が1月14日に行われて以降、多くは1月14日に男踏歌が行われるようになりました。しかし、955年（天暦9年）に一時中断。冷泉天皇の代に再開されましたが、983年（永観元年）を最後に男踏歌は中止され、女踏歌のみが毎年行われるようになりました。1012年（長和元年）から約10年間は女踏歌も中断しています。

1519年（永正16年）以降は乱世により女踏歌も衰退し、江戸時代には形式化が進みました。ただし、1月16日の節会自体は室町後期以降、元日節会や1月7日の白馬節会とともに断続的に行われ、江戸時代には正月三節会として原則的に行われるようになります。

江戸時代の『在京随筆』には、女官の下女が舞妓として奉仕する様子が記されています。近世の儀式を描いた『公事録附図』によれば、紫宸殿の南庭に筵を敷き、舞姫が扇をかざして歩いていたとされますが、舞の実態があったかは疑問視されています。

現在では、1月11日に熱田神宮で踏歌神事が行われており、平安中期に廃絶した男踏歌の形式を伝えています。熱田神宮には鎌倉時代の資料が現存し、当時から行われていたことがわかります。石清水八幡宮や伊勢の斎宮に関連する離宮院でも踏歌が行われていたことから、神社から神社へと広がっていったと考えられています。

男踏歌

男踏歌は、正月14日または15日に行われました。天皇が清涼殿に出御し、王卿を召して宴が催されました。舞人は右近陣前庭から楽を奏しつつ庭前に進み、祝詞を奏上し、「竹河」を奏でました。儀式の後、舞人らは東面南階から上がり、内侍が被綿を分け与え、和琴を弾く者に贈りました。『源氏物語』玉鬘・竹河帖にも描写があります。

女踏歌

女踏歌は、正月16日に行われました。天皇は南殿に出御し、群臣を召して酒饌を賜りました。国栖歌笛が奏でられた後、40人の舞妓が参入し、校書殿南端で東面して立ち、大輪を描いて廻りました。その後、校書殿東庭に立ち、歌曲を歌って退出しました。饗宴後、舞妓は中宮に参入し、饗禄を給わりました。平安時代の様子は『凌雲集』や『年中行事絵巻』に描かれています。

踏歌詞

踏歌は中国から伝わった芸能であり、漢文の詞章に合わせて行われました。男踏歌では和語の歌謡である催馬楽や「言吹」という祝詞も行われ、これらは熱田大社の踏歌神事に伝習されています。

参考文献

倉林正次『饗宴の研究（儀礼編）』
中田武司『編踏歌節会研究と資料』

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