西春彦

西 春彦について

西 春彦（にし はるひこ、1893年4月29日 - 1986年9月20日）は、大正から昭和にかけて活躍した日本の外交官であり、太平洋戦争開戦時には外務次官として重要な役割を果たしました。彼の業績や人生の軌跡は、日本の外交史において特筆すべきものがあります。

来歴

西春彦は、鹿児島県加世田（現在の南さつま市）で生まれました。遠い親戚には作曲家の瀧廉太郎がいることでも知られています。彼は鹿児島県立川辺中学校、そして一高を卒業後、東京帝国大学の法学部に進学しました。1918年に外務省に入省し、その後の彼のキャリアは外交官としての道を確立することとなります。

彼のニューヨーク領事官補としての時代には、同じく鹿児島出身の外交官、東郷茂徳と出会い、相互に敬意を持ち続ける関係を築きました。東郷の昇進に伴い、その部下としての役割を果たしつつも、青島総領事に任命された際には、東郷との関係に微妙な変化が生じました。青島での彼は、日本の領事裁判権を行使する日本人に対して厳格な姿勢を貫き、地元の中国人からの評価を得ることとなりました。

その後、学校間での転任を経て、1941年には東條内閣の外務次官に任命されます。彼の同郷という背景から、内務省内では「側近人事」との批判もありましたが、日米交渉の緊迫した状況を考慮し、東郷は西を信頼できる人物として起用しました。しかし、ハル・ノートの提示がもたらした緊張によって日米間の対立が先鋭化し、開戦直前に両者は辞任する運命にありました。

戦後の活動

戦後、西春彦は公職追放となったものの、東郷の弁護人として極東国際軍事裁判に関わることになります。1953年には駐オーストラリア大使、1955年には駐イギリス大使を務め、対日感情の緩和に尽力しました。特に日ソ国交回復交渉において、西は下準備を進めていたとされています。

彼は、横浜のホテルニューグランドに関わり、戦後の復興活動にも貢献しました。副会長として地域の経済振興に尽力した後、1958年には同ホテルに入社し、最終的に社会長にまで登り詰めます。

安保条約改訂問題に対する姿勢

1960年には日米安全保障条約の改訂に関する問題が浮上し、西は事前協議制や極東条項について論じ、改訂案が日本の安全保障に寄与せず、むしろ国際情勢を不安定化させると警告しました。この意見により、安保改訂に対する反対派が勢いを増すこととなります。ただし、西はあくまで改訂案の問題点を指摘する立場であり、日米関係の改善自体には否定的ではありませんでした。彼の発言は、安保議論が激化する要因となり、大統領訪日中止の一因となったことに心痛を感じていたと言われています。

晩年と影響力

西春彦は晩年まで核兵器廃絶運動に参加し続け、著作の執筆や伝記の編纂にも力を注いでいました。1984年にはNHKの大河ドラマ『山河燃ゆ』で登場人物として描かれ、多くの人々に知られる存在となりました。彼の業績は、今なお日本の外交の歴史に影響を与え続けています。

栄典

彼は1940年に紀元二千六百年祝典記念章を受章し、1965年には勲二等旭日重光章も授与されています。自らの外交活動を振り返り、多くの著書を残しており、その中には『わたしの外交白書』や『回想の日本外交』などがあります。西春彦の人生と功績は、日本の外交の発展に寄与した重要な要素として語り継がれています。

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