西沢正次

西沢 正次（にしざわ まさじ）

1947年5月19日、愛知県宝飯郡御津町（現在の豊川市）に生まれた西沢正次は、捕手としてプロ野球界で活躍した人物です。

経歴

豊川高校を卒業後、1966年に社会人野球の強豪、河合楽器に入社しました。ここでは岡庭巌の控え捕手としてプレーしましたが、1969年の都市対抗野球大会ではチームの準決勝進出に貢献しました。当時のチームメイトには、後にプロでも活躍する佐藤正治や上垣内誠らがいました。

広島東洋カープ時代

社会人での活躍が評価され、1969年のドラフト会議で広島東洋カープから6位指名を受けて入団しました。プロ入り後はすぐに一軍に定着とはいきませんでしたが、1973年頃から徐々に出場機会を増やし、一軍に定着しました。同年7月4日、後楽園球場で行われた巨人戦では、相手投手新浦寿夫からプロ入り初となるソロ本塁打を放ちました。この試合では巨人に序盤からリードを許す展開でしたが、西沢の本塁打がチーム初安打となりました。

また、同年9月16日の中日ドラゴンズ戦（広島市民球場）では、中日に先制を許した直後の3回裏に、相手エース星野仙一から同点となるソロ本塁打を放つ活躍を見せました。チームはこの後勝ち越し、4対1で勝利を収め、このシーズンの中日戦勝ち越しを決めました。

1974年には、それまで正捕手を務めていた水沼四郎からポジションを奪い、自己最多となる95試合に出場するなど、チームの主力捕手として成長しました。

広島時代には、ウエスタン・リーグの西鉄ライオンズ戦（平和台球場）で、相手投手永本裕章が捕手の構えたところに投げられないことにいら立ち、永本への返球をわざと転がしたというエピソードも残されています。

太平洋クラブライオンズ・クラウンライターライオンズ・西武ライオンズ時代

1975年、西沢は三輪悟、米山哲夫との交換トレードで、松林茂と共に太平洋クラブライオンズへ移籍しました。このトレードの背景には、太りやすい体質や、ゲーム中に投手を厳しく叱りつける彼の性格が、当時のジョー・ルーツ監督の意向に沿わなかったことがあると言われています。当初は移籍に難色を示していた西沢でしたが、選手兼任監督であった江藤慎一に熱心に請われたことで移籍を決断したとされています。

奇しくも、西沢が広島を離れた1975年は、広島東洋カープが球団創設以来初のセ・リーグ優勝を飾った年でした。そのため、移籍先のチームメイトとなった国貞泰汎（彼もこの年テスト入団で太平洋入りした元広島選手）と共に、「（広島の）初優勝の時に広島にいたかった」とスポーツ紙に語ったことが報じられています。

太平洋ライオンズ移籍後も、持ち前の打撃を発揮する場面がありました。1975年8月6日の阪急ブレーブス戦（平和台球場）では、序盤に阪急にリードを許す苦しい展開の中、同点に追いついた後の4回裏に相手投手白石静生から勝ち越しとなる2ラン本塁打を放ちました。さらに7回裏には満塁のチャンスで走者一掃となる3点適時二塁打を放つなど、この試合で2安打5打点の活躍を見せ、チームの大勝に貢献しました。

1976年には、当時の正捕手楠城徹の故障もあり、自己最多に迫る70試合で先発マスクを被りました。しかし、1977年以降は若菜嘉晴が台頭し、さらに1979年には野村克也、田淵幸一といったベテラン捕手がチームに加わったことで、捕手としての出場機会は激減しました。

出場機会を求めてか、1979年には代打として出場した後に、二塁手や三塁手として守備に就くという珍しい起用も経験しました（いずれも守備機会はなし）。

1980年は、前年からの捕手陣に加え、新人大石友好や外野からのコンバート組である吉本博らも加わり、一層ポジション争いは激化しました。西沢は前年45試合に出場していましたが、この年は開幕を二軍で迎えます。二軍では捕手として継続的に出場し、打率3割を維持するなど好調でしたが、レギュラー格は打撃に定評のある山川猛であり、西沢は実質的に3番手捕手でした。打撃好調だったため、一塁手として出場する機会もありましたが、結局シーズンを通じて一軍昇格は叶いませんでした。また、シーズン途中の6月には、新外国人スティーブ・オンティベロスの入団に伴い、背番号を10番から44番に変更しました。

引退後

1981年5月、現役を引退しました。

引退後は、広島に戻り、カープ時代によく通っていた中区西平塚町の「ふじや焼肉店」で約半年間修行しました。その後、福岡市博多区中洲に自身の焼肉店を開業しました。午後6時から午前3時まで、約30席の店を一人で切り盛りするなど、商売に必死に打ち込んだ努力が実を結び、わずか3年で開業時の借入金を完済したと言われています。

背番号

37 （1970年 - 1974年）
10 （1975年 - 1980年途中）
44 （1980年途中 - 同年終了）

記録

プロ入り後の主な初記録は以下の通りです。

初出場：1971年4月11日、対読売ジャイアンツ2回戦（後楽園球場）
初打席：同上、相手投手山内新一から三振
初安打：1971年6月16日、対読売ジャイアンツ9回戦（広島市民球場）、相手投手堀内恒夫から
初先発出場：1971年7月7日、対阪神タイガース17回戦（広島市民球場）、8番・捕手
初打点：1971年7月13日、対中日ドラゴンズ12回戦（中日スタヂアム）、相手投手星野仙一から適時三塁打
* 初本塁打：1973年7月4日、対読売ジャイアンツ12回戦（後楽園球場）、相手投手新浦寿夫から左越ソロ

西沢正次は、勝負強い打撃と闘志あふれるプレーでファンを魅了し、引退後も実業家として成功を収めるなど、多才な一面を見せた人物です。

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