西照寺

西照寺（さいしょうじ）

西照寺は、奈良県奈良市今辻子町に所在する単立寺院です。元々は浄土宗の寺であり、山号は紫雲山、院号は家康院という名称を持っています。本尊は腹帯阿弥陀如来で、歴史的な背景が豊富にあります。

歴史的背景

寺の開基は叡尊とされており、初めは下三条に真言律宗の草庵として建立された場所でした。当初の名は禅松庵であり、その後西照庵と改められました。弘治2年（1556年）には、興福寺別当から紫雲山光明院西照寺の称号を賜りました。後の中興の祖である英誉良阿上人のもとで浄土宗に改宗されたと伝えられており、現在の位置へ移転したとされています。

江戸時代には、東照宮が建立され、徳川家康公の霊を祀る施設とされました。家康の遺骨を納めた墓碑も建立され、幕府からも深く信仰されたことが記録に残っています。特に奈良奉行が赴任した際にはこの寺を訪れたという証拠が、川路聖謨の日記に記されています。

1880年の開化天皇陵の整備に伴い境内地が縮小されましたが、2017年には本堂等が誉見誠和尚によって再建されました。

文化財

西照寺には多くの文化財が存在します。

• - 腹帯阿弥陀如来

この像は源義仲の母である栄松院が安産の守護を願い造立したとされています。腹帯を巻いた姿が特徴で、平安時代の作風を持ちながら、江戸時代に漆を施されたため、正確な制作時期は不明です。修理時に発見された墨書きから、その歴史を垣間見ることができます。

• - 良阿上人像

本寺の中興の祖である良阿上人の像が、本尊の左脇壇に安置されています。彼は今川義元の子として知られ、ある出来事がきっかけで紫雲山西照寺の称号が与えられました。

• - 徳川家康公位牌

かつては境内の東照宮御廟屋に祀られていましたが、現在は本堂に安置されています。

• - 徳川家康公墓碑

本堂前に建立された宝篋印塔は元治年間のもので、家康の分骨が納められています。

• - 百萬供養塔

この石造りの五輪塔は、江戸時代には百萬屋敷内にあったとされ、後に寺に移された伝説があります。地元の歴史を物語っています。

逸話や伝説

西照寺には、いくつかの興味深い逸話があります。開祖の叡尊は源義仲の子孫とも言われ、母・栄松院は婦人薬の製造を始めたと伝わります。現在の菊岡漢方薬店はその末裔であるとされ、家が残した文書には、義仲の子がこの地域に根付いたと記されています。

故事に関して、徳川家康にまつわる伝説も数多く存在します。彼が大阪冬の陣の際、奈良の桶屋によって匿われたという話があり、これに感謝して寄進を行ったとのことです。

また、百萬という名の巫女にまつわる伝説もあり、彼女と子どもとの再会を描いた話は、観阿弥により謡曲に仕立てられました。

アクセス

西照寺には交通の便も良好で、近鉄奈良駅からは徒歩約6分、JR奈良駅からも徒歩約7分の距離にあります。いずれの駅からも、簡単に訪問できる立地です。

このように、西照寺は歴史的な遺産や伝説に彩られた場所で、多くの参拝者に親しまれています。

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