青海

青海：歴史的背景と地理

青海（せいかい、Qinghai）は、チベット高原の中央部に位置する地域で、清朝の雍正帝によって18世紀初頭に形成された地域的枠組みです。この地域は、チベットの歴史と文化に深く根ざしており、遊牧民の生活が営まれてきました。地理的には、河西回廊の西南部、四川地方の西部に位置し、アムド地方の中央部から西北部にかけて広がっています。モンゴル人はこの地のモンゴル人を「デートモンゴル（高地モンゴル）」と呼びます。

青海の成立：雍正帝のチベット分割

17世紀、オイラト部族連合の盟主であったグシ・ハンがチベット各地を征服し、ヤルンツァンポ河流域をダライ・ラマ5世に寄進しました。彼は青海草原に自身の皇子たちを配置し、その他の地域を皇子たちに分配しました。しかし、1723年から1724年にかけて、雍正帝が青海草原に侵攻し、グシ・ハン一族を屈服させました。これにより、グシ・ハン一族が支配していた地域は清朝の支配下に入り、チベットの支配構造が大きく変化しました。

雍正帝は1724年から1732年にかけてチベットの分割を行い、グシ・ハン一族が所領していた直轄地や諸侯を、「ダライ・ラマに賞給するもの」と清朝が安堵するものに分けました。チベットはダライ・ラマの「香火田地」たる「西蔵」、青海の2地方と、隣接する中国の各省（甘粛、四川、雲南）に分属させられました。この分割によって、青海という地域的枠組みが形成されました。

青海：遊牧民の分割

チベット高原の中央部には、七十九族と総称されるチベット系・モンゴル系の遊牧民集団が居住していました。1732年、この集団はタンラ山脈を境界として南北に分割され、北方の「四十族」は西寧に、南方の「三十九族」は西蔵に所属することとなりました。グシ・ハン一族が領有する青海草原と、その南に隣接して「四十族」が居住するカム地方北部がまとめて「青海」とされました。

清朝時代の青海

清朝時代の青海地方は、藩部と位置づけられ、甘粛の西寧に駐箚する西寧弁事大臣を通じて理藩院の管轄を受けました。この地域は、清朝の統治下で独自の発展を遂げました。年表を以下に示します。

1723年 - 1724年：清朝の青海出兵（「ロブサンダンジンの乱」）。
1724年 - 1732年：雍正帝によるチベット分割。
1732年：チベット高原中央部の七十九族がタンラ山脈を境界に分割され、西蔵と青海の境界が定まる。
1912年：中華民国のもとで青海特別地区となる。
1928年：青海省が発足。

青海地方の諸集団

青海には、様々な民族集団が居住していました。

青海蒙古三十旗: グシ・ハン一族と、その支配下にあったオイラト系モンゴル人。
玉樹四十族: 旧七十九族のうち、タンラ山脈の北側に分布するチベット系・モンゴル系の遊牧民集団。ナンチェン王に従属し、さらに個別に清朝から衛所の称号を受けた。

青海の歴史的意義

青海は、清朝のチベット政策において重要な役割を果たしました。雍正帝によるチベット分割は、チベットの支配構造を大きく変え、青海という新たな地域的枠組みを生み出しました。この地域は、チベット、モンゴル、清朝の文化が交錯する場所として、独自の歴史を刻んできました。青海は、その地理的・歴史的な重要性から、今日に至るまで多くの研究者の関心を集めています。

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