親鸞 白い道

親鸞 白い道

『親鸞 白い道』は、1987年に公開された日本の劇映画です。本作は、日本仏教史上重要な人物である鎌倉時代の僧侶、親鸞の波乱に満ちた半生を克明に描いています。

この映画の最大の特徴は、俳優として知られる三國連太郎が、自身の創作活動の集大成ともいえる小説『白い道』を原作とし、自ら初めて監督を務めた点にあります。三國にとって、親鸞という存在は長年の探求テーマでした。実は、かつて所属していた東映で1960年に製作された映画『親鸞』に関わった際、親鸞像を巡る意見の対立から主演を降板するという苦い経験がありました。この時の経験が、三國に親鸞や鎌倉仏教への深い探求心を抱かせ、独学での研究を長年にわたって続けました。そして、その探求の成果として執筆した小説を基に、自身の理想とする親鸞像を映像化するために、本作の製作実現へと至ったのです。

物語は、親鸞（作中では善信）が仏道を志し、法然との出会いを経て、新しい仏教の教えを広める中で経験する苦難や内面の葛藤、そして多くの人々との出会いを描いています。主人公の親鸞こと善信を演じたのは森山潤久で、この演技で第11回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しました。その他、恵信役に大楠道代、射鹿役に泉谷しげる、阿藤太役にガッツ石松、宇都宮蓮生役に小松方正、しいな役に亜湖、小黒役に麻田真代、稲田の女役に小田切みき、侍女役に中原早苗、綾衣役に原泉、ちよ役に緑魔子、仏子役に宮下順子、一斗役に安藤一夫、藤原定家役に岩井半四郎、行仙役に小沢栄太郎、佐竹義繁役に蟹江敬三、善念役に菅貫太郎、明寅役に丹波哲郎、琵琶法師役に中村嘉葎雄、男坐女役に麿赤兒、宝来役に三國連太郎（自身も出演）、放免役に若山富三郎、稲田頼重役にフランキー堺といった、当時の日本映画界を代表する個性派俳優たちが多数出演しています。

スタッフとしては、監督・原作・脚本・企画を三國連太郎が兼任。脚本は藤田傳と共同で執筆されました。製作は高橋松男、大谷信義、加藤博明、プロデューサーは藤本潔が務めました。撮影は山崎善弘、音楽はYAS-KAZ、美術は木村威夫、編集は井上治が担当。録音は橋本文雄と宮本久幸、スチールは井本俊康、監督補は丸久生、照明は加藤松作がそれぞれ担当しました。製作協力には三國事務所がクレジットされています。

本作は国内外で高い評価を受け、特に第40回カンヌ国際映画祭では審査員賞を受賞するという快挙を成し遂げました。この受賞は、三國連太郎が長年温めてきた親鸞というテーマへの真摯な取り組みと、初めてとは思えない堂々とした演出が高く評価された結果と言えるでしょう。

公開から時を経て、親鸞聖人の750回忌を迎えた2011年には、初めてDVDとしてソフト化されました。これにより、より多くの人々がこの意欲作に触れる機会を得られるようになりました。

また、三國連太郎は映画だけでなく、親鸞に関する著書も複数発表しています。主な関連著書としては、『白い道 法然・親鸞とその時代（全3巻）』、『親鸞』（法蔵館）、自叙伝である『わが煩悩の火はもえて 親鸞へいたる道』、『親鸞に至る道』などがあり、これらからも彼がいかに親鸞という存在に深く傾倒していたかがうかがえます。

『親鸞 白い道』は、単なる伝記映画にとどまらず、人間の内面、信仰とは何かを問いかける、三國連太郎という稀代の表現者の魂が込められた作品と言えるでしょう。

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