角倉了以

角倉了以（すみのくら りょうい）

角倉了以は、天文23年（1554年）に生まれ、慶長19年（1614年）に没した、戦国時代から江戸時代初期にかけての京都を代表する豪商です。本姓は吉田氏、諱は光好。

朱印船貿易と水運事業

了以は、朱印船貿易の開始とともに安南（現在のベトナム）との貿易に乗り出し、莫大な富を築きました。その私財を投じ、山城国（現在の京都府）の大堰川（保津川）と高瀬川を開削しました。特に高瀬川の開削は、京都の経済発展に大きく貢献し、物資の輸送を円滑にしました。開発費用は現在の価値に換算すると150億円にも上ると言われていますが、通行料収入によってすぐに回収できたと伝えられています。

江戸幕府の命令により、富士川、天竜川、庄内川などの河川改修にも携わりました。これらの事業は、治水だけでなく、水運の便を良くし、経済の活性化に繋がりました。

地元京都では、商人としての側面よりも、琵琶湖疏水の設計者である田辺朔郎と共に「水運の父」として広く知られています。

角倉家のルーツと隆盛

角倉家の先祖は、宇多源氏の流れを汲む佐々木氏の分家で、近江国愛知郡吉田村（現在の滋賀県犬上郡豊郷町吉田）をルーツとします。室町時代中期に京都へ移り住み、室町幕府に仕える医者として活躍しました。医業で得た財産を元に土倉を営み、了以の代には「角倉」という土倉の名が家名となりました。

角倉家は、茶屋四郎次郎の茶屋家、後藤庄三郎の後藤家と共に「京の三長者」と称されるほどの権勢を誇りました。他の二家が徳川家康に接近することで勢力を拡大したのに対し、角倉家はそれ以前から貿易によって財を成していました。

子孫

子孫には、小児科医で天然痘撲滅に尽力した角倉賀道、医化学者の角倉邦彦、教育評論家の千住文子、画家の千住博、作曲家の千住明、ヴァイオリニストの千住真理子、歌手のSammyなどがいます。

ゆかりの地

角倉了以の邸宅は、現在の日本銀行京都支店の場所にありました。別邸は、現在の飲食店がんこ高瀬川二条苑となっています。墓所は京都市嵯峨野の二尊院にあります。

了以の功績は、明治40年（1907年）に正五位を追贈されたことからも窺えます。

登場作品

* 岩井三四二『絢爛たる奔流』（講談社、2017年）

角倉了以は、京都の発展に大きく貢献した偉大な商人であり、その功績は後世に語り継がれています。

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