角倉賀道

角倉賀道：種痘と酪農に捧げた生涯

角倉賀道（すみのくら よしみち、1857年4月14日 - 1927年5月17日）は、幕末から昭和初期にかけて、医師、実業家、社会運動家として多岐にわたる分野で活躍した人物です。豪商・角倉了以の子孫として生まれ、東京牛痘館の館主として天然痘撲滅に貢献する一方で、日本の酪農業の先駆者としても知られています。

天然痘撲滅への貢献

賀道は小児科医として、当時猛威を振るっていた天然痘の撲滅に尽力しました。東京神田に日本初の民間種痘所「東京牛痘館」を設立し、種痘の普及に奔走。天然痘ワクチンの増産を目指し、アメリカからホルスタインを大量に輸入し、全国有数の規模を誇る乳牛牧場を複数開設しました。この活動は、日本の公衆衛生の向上に大きく貢献しました。

酪農業の先駆者として

賀道は、酪農の副産物である牛乳に着目し、病人や子供、栄養不足の乳児に牛乳を普及させる活動を行いました。当時、牛乳は薬として扱われるほど高価でしたが、賀道は牛乳の栄養価を啓蒙し、人々の健康増進に貢献しました。また、日本で初めて蒸気滅菌牛乳を販売するなど、牛乳の品質向上にも尽力しました。これらの取り組みを通じて、日本の酪農業・牛乳業の発展に大きく貢献しました。

キリスト教徒としての社会活動

賀道は熱心なバプテスト派キリスト教徒であり、三崎町教会の設立や禁酒運動など、様々な社会活動にも積極的に参加しました。貧困と病苦にあえぐ人々への救済活動や、労働者のための教育施設の開設など、キリスト教の精神に基づいた社会奉仕活動を展開しました。これらの活動は、当時の社会に大きな影響を与えました。

生涯

1857年、尾張国知多郡八幡村（現・愛知県名古屋市）に医師の長男として生まれた賀道は、幼くして両親を亡くし、姉と祖父に育てられました。京都府医学校で医学を学び、済生学舎で外科・内科・眼科を修業。1880年に内務省医術開業免許を取得し、神奈川県藤沢市で開業しました。その後、神奈川県天然痘避病院長を経て、1893年に東京牛痘館を設立し、天然痘撲滅と酪農業の発展に尽力しました。1927年、70歳で生涯を閉じましたが、その功績は今も語り継がれています。

家族

角倉家は京都の豪商角倉家をルーツとしており、賀道も角倉了以の子孫です。妻の咲子との間には五人の子供が恵まれました。
長男の正道は麻布獣医学校卒業後、愛光舎を継いで牧場経営、牛乳販売を継続しました。次男の邦彦は鳥取大学教授を務めました。長女の愛子は醫學博士井上達二に嫁ぎ、その子孫は井上眼科病院を継承しています。

交友関係

賀道は、片山潜、山室軍平、松村介石、神近市子、尾崎行雄など、様々な分野の著名人と親交がありました。特に、山室軍平とは親密な関係にあり、救世軍の活動を支援しました。

著作

賀道は、種痘や牛乳に関する著書を多数執筆しました。
「牛痘新論」（1882年）
「種痘全書」（1894年）
* 『牛乳飲用の栞』（1899年）

これらの著書は、当時の医学や酪農に関する知識を普及させる上で重要な役割を果たしました。

角倉賀道は、天然痘撲滅、酪農業の発展、社会福祉活動など、多岐にわたる分野で社会に貢献した偉人です。彼の功績は、今も私たちの生活に深く根ざしています。

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