角谷正彦

角谷正彦の生涯

角谷正彦（かどたに まさひこ）は、1936年2月14日に三重県四日市市で生まれ、2019年9月22日に83歳で生涯を閉じました。彼は日本の官僚として、特に大蔵省（現財務省）での活躍が知られています。最終的には国税庁長官を務め、日本の財政と税制に大きな影響を与えました。

学歴とキャリアのスタート

角谷は、父親の転勤に伴い、東北大学附属小学校、東北大学附属中学校を経て、三重県立亀山高等学校を卒業。その後、東京大学に進学しました。大学では、著名な憲法学者である宮澤俊義のゼミに所属し、卓越した成績を修めました。宮澤教授からは、将来の大学教授の地位を約束されるほど期待されていました。大学の同期には、後に日本銀行総裁となる福井俊彦がいます。

1957年、角谷は国家公務員採用上級試験（法律）で首席合格を果たし、さらに東京大学法学部を総代として卒業、司法試験でも首席合格という、10年に1人と言われる「三冠王」を達成しました。1958年4月には大蔵省に入省し、官僚としてのキャリアをスタートさせます。

大蔵省での活躍

入省後、角谷は大蔵省の様々な部署を経験しました。近畿財務局、名古屋国税局での勤務を経て、主計局では予算編成に携わり、その手腕を発揮しました。主計局では、農林、運輸、郵政、電電公社、外務、経済協力、通商産業など、幅広い分野の予算を担当しました。特に国鉄問題では、分割・民営化へのレールを敷いた中心人物の一人として知られています。また、主計局が税制策定過程においても主導権を握り、大型間接税（売上税）導入法案構想に関する中曽根康弘首相の答弁草稿をまとめたとされています。

1988年には大蔵省証券局長に就任。リクルートコスモス株疑惑の発覚に対応しましたが、その際、行政指導による譲渡先リストの提出を求めなかったとされています。また、バブル景気崩壊の引き金となった「角谷通達」と呼ばれる通達を出し、証券業界における不適切な取引慣行の是正に尽力しました。

国税庁長官とその後

1990年には国税庁長官に就任し、日本の税務行政を統括しました。証券局長時代に行った行政指導が、後の「証券スキャンダル」で問題化しましたが、当時の担当者が既に死去していたため、釈明の機会は与えられませんでした。

1991年に官僚を退任後、日本損害保険協会副会長、中小企業金融公庫総裁などの要職を歴任しました。その後も、日本総合研究所、日本興業銀行、みずほコーポレート銀行などの顧問を務め、経済界での活動を続けました。

その他の活動と評価

角谷は、その卓越した能力と実績から、多くの部下や関係者から尊敬を集めていました。大蔵省の部下であった高橋洋一は、数少ない優秀な上司として角谷と長野庬士の名前を挙げています。

2009年には瑞宝重光章を受章し、その功績が讃えられました。2019年9月22日に83歳で死去。叙正四位。

角谷正彦は、日本の官僚として、その生涯を通じて財政と税制に大きく貢献した人物として、記憶されるでしょう。

著書

『「政府調達に関する協定」と官庁契約制度』（編著）（大蔵財務協会、1981年）

もう一度検索