許 (春秋)

許（きょ）

概要

許は、西周時代から春秋時代にかけて存在した諸侯国で、爵位は男爵でした。国君は姜姓を名乗り、斉と同じ祖先を持つとされています。建国者は許文叔で、最後の君主は許伯彪です。許に関する歴史的記録は断片的で、歴代君主以外の情報は多くは残っていません。

地理

許の地理的な位置は、歴史の中で数回にわたり変遷しています。当初は現在の河南省許昌市建安区に位置していました。しかし、春秋時代になると、鄭や楚といった強国の圧迫を受け、紀元前576年には霊公が「葉」（現在の河南省平頂山市葉県南）へ南遷しました。その後、許は楚の附庸国となりました。

紀元前538年には、悼公が「夷」（後の楚の城父邑、現在の安徽省亳州市譙城区南東）へ遷都しました。さらに、紀元前534年には「析」（後の楚の白羽邑、現在の河南省南陽市西峡県）へ、紀元前529年には再び葉へ、そして紀元前506年には「容城」（現在の河南省平頂山市魯山県南）へと遷都を繰り返しました。最終的に、戦国時代初期に楚によって滅亡しました。

歴史

起源

史書の記述によれば、許の国君は斉と同祖であり、伯夷の末裔であるとされています。殷を滅ぼした西周の成王は、諸侯を各地に封じましたが、その際、許は姜姓の諸侯国の一つとして分封されました。始祖である許文叔は、武王が殷を討伐した際に大きな功績を挙げたため、この地に封じられたとされています。

春秋戦国時代

春秋時代に入ると、鄭や楚といった強大な諸侯国が台頭し、許は度々侵略を受けるようになりました。弱小国であった許は、強国に対抗する力を持ちませんでした。そのため、許は強国との友好関係を築くことで、自国の存続を図りました。

紀元前654年には、楚が許に侵攻し、許は大敗を喫しました。そのため、許の君主は「肉袒謝罪」を行い、楚は軍を退きました。その後も、楚の成王の時代に再び楚が侵攻してくると、許の君主は再び「肉袒謝罪」を行い、和解を求めました。このような状況下で、許は楚や鄭の興亡の波に翻弄され、遷都を繰り返すしかありませんでした。

紀元前576年に霊公が葉へ南遷した後も、紀元前538年には悼公が夷へ、紀元前534年には析へ、紀元前529年には再び葉へ、そして紀元前506年には容城へと、数年から数十年おきに遷都を繰り返しました。容城への遷都後は、しばらく休止期間がありましたが、諸侯間の争いは激化し、最終的に許は併合されることになりました。

滅亡

『春秋左氏伝』によると、許男斯の治世中に、楚の都である郢が呉の攻撃を受けている隙を突かれ、鄭によって滅亡しました。その後、楚の支援の下で、許の元公が擁立されましたが、厳密には許の君主とは見なされません。紀元前481年、楚の恵王が公子結を許の君主として封じましたが、その5代後、戦国時代初期に許は楚によって完全に滅ぼされました。

滅亡後

滅亡後、許の人々は中原や江南へと移住し、その際に国名を氏（姓）としたのが、許姓の由来の一つとされています。

文化

許の穆公の妻である許穆公夫人は、中国史上最古の女性詩人であるとされています。彼女の作品は、当時の社会や文化を反映する貴重な資料となっています。

歴代君主

『漢書』地理志には「二十四世で楚によって滅亡した」とありますが、文献で実在が確認できる君主は18名、青銅器の銘文で考証されているのはわずか3名であり、合計しても21名にとどまります。許文叔から荘公までの世系は『資治通鑑外紀』に記録されています。

系図

（系図はテキストでは表現が難しいため省略）

注釈

（注釈は省略）

出典

（出典は省略）

参考文献

楊伯峻『春秋左傳注』、北京、中華書局、2005年。
Ancient and Early Medieval Chinese Literature (vol.3 & 4): A Reference Guide, Part Three & Four. (2014)

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