許儀後

許儀後（きょ ぎご/きょ ぎしゅん）

許儀後、または許儀俊は、生没年不詳の戦国時代から江戸時代初期にかけての人物で、島津氏に仕えた医師です。許三官とも呼ばれていました。島津義弘の医術の師であったという説もあります。

生涯

許儀後の出身地については、『朝鮮王朝実録』などから中国福建省とする説がありましたが、『全浙兵制考』や『薩藩旧記雑録』の研究から、江西省吉安府の出身であるという説が有力視されています。

彼は明の出身でしたが、元亀2年（1571年）頃に倭寇に捕らえられ、捕虜として薩摩に連行されました。そこで島津義久に才能を認められ、侍医として仕えることになり、そのまま日本に帰化しました。義久と共に豊臣秀吉にも謁見した記録が残っています。

しかし、秀吉が起こした文禄・慶長の役の目的が明の征服にあることを知ると、同じく薩摩に帰化していた郭国安（後の汾陽理心）と共に、明へ日本の国内事情を記した密書を送る決意をします。この密書は同郷の海商である朱均旺に託されました（明の使者が許と接触した際、秀吉を快く思わない義久と明が連合して秀吉を攻める提案をしたという説もあります）。

秀吉はこの動きを察知しており、義久と共に秀吉に謁見した際、巨大な鍋を鋳造させ許を煮殺そうとしたという逸話があります。しかし、徳川家康が秀吉を諫めたことで許は命拾いをしました。その後、家康が病になった際には、許が薬を調剤して恩を返したとされています。

文禄2年（1593年）には、許孚遠によって派遣された史世用が、商人に扮して内之浦に来航し、舟を提供した許豫と共に許儀後との接触を試みました。これを不審に思った伊集院忠棟と正興寺住職の玄龍は、許儀後を通訳として史世用を取り調べました。史世用と許豫は、来航の目的をあくまで通商であると主張し続け、後に解放されました。その後まもなく、許儀後は義久の命により、島津勢の疫病治療のために朝鮮へ渡海しています。

没年は不明ですが、慶長18年（1613年）の時点で410石を領していたという記録が残っています。

脚注

参考文献

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
佐々木綱洋　『都城唐人町　海に開く南九州』（鉱脈社　2009年）ISBN 978-4-86061-305-1
稲葉行雄　『「さつま」歴史人名集』（高城書房出版　1991年）ISBN 4-924752-28-2

関連項目

島津義久
文禄・慶長の役
許孚遠

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